友達
あらゆる生き物か、俺が思いつく限りは『妖怪』と『陰陽師』だな。それ以外だと悪霊もか。レベル3の悪霊は、百鬼夜行の理事長の活躍であと三人まで減っているが、それでもまだ多くのレベル2の悪霊が多く存在する。
「だからね、まずは手っ取り早く妖力を吸収する為に、お前を頂く」
…………なにっ、それが狙いか!!
「止めろ、この野郎!!」
逃げろ、烏天狗。奴が事件と言っていたのはこれだったのだ。奴は俺の体で全てを奪ったとしても、存在する能力をちゃんと実行できるのか検証したかったのだ。俺をどれ程くらいの範囲で使えるかを。
たかがそんな下らない事のために、俺の友達である烏天狗を利用してやろうとしているのか。あまりに許しがたい行動だ。いくら不死身の妖怪と言っても、妖力を全て奪われてしまっては、復活できるのは分からない。もしかしたら……絶命するんじゃ……。
「貴様っ!!」
「今更、そんな顔をしたって無駄だ。これから大切な実験を開始しますからね。絶対に逃がさないよ、君との掛け合いも楽しかったが、これで終わりだ。今度はあの世で『お友達ごっこ』して遊んでな。頭の狂った大妖怪」
奴の右手が烏天狗を掴んだ、それは紛れも無く悪霊の手。本来の俺の腕力なら烏天狗とのパワー勝負など論外だったのだが、奴は手の平に妖力を纏っている。俺が山椒魚を突き飛ばした時に負った怪我などしないのだろう。
「貴様なんぞにワシが負けるか、貴様のような下らない理由で戦っている奴に、負ける訳がないだろうが」
「おいおい、お前が言う台詞かよ。戦う理由なんてステータスに影響する訳がないだろうが」
それは……否定できない。烏天狗に出会った頃の俺ならば、自信満々に『そんな事はない』とか言えたのだろうが、こんな歳になってこんな性格になってしまったから、どうしようもない。
胸倉を掴まれている、表情を見る限りは抵抗したくても出来ないようだ。でも別に他の体を防がれている訳ではない。足で奴を蹴飛ばすなり、腕で奴を殴りつけるなど、拘束を解く手段なんていくらでも出来るはずだ。
なのに……しない……。
これはただの想像であるが、奴は烏天狗の動きを止めているのは、別の能力だと思える。きっと、鬼神スキル『宵氷』のような動きを封じる手だ。
…………あれ? どうして、俺は?
「……ここまでか……………」
「そうだよ、烏天狗。君は今から私に妖力を吸い取られて……死ぬんだ」
…………嘘だ、奴は、死ぬ、って、言った。烏天狗が……死ぬ?
妖怪は死なない、はずだ、よな。だって、悪霊は妖怪を敵対していない、はずだった……よな……。やめ、ろよ。止めてくれ。止めてくれ。
やっと、今の俺の何も感じない体にも絶望が浸食した。
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」