表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
333/462

仕草

取引……それは、俺の逃げ腰が伝染したのか……烏天狗。圧倒的に力の差が歴然の相手と戦う場合に、逃げるという選択が無い俺には、交渉という闘い方を貫いてきた。だが、今まで最強の妖怪だった烏天狗は、そんな真似をするキャラじゃない。さっきの隠れるという行動といい、烏天狗の戦闘スタイルが変わってきている。


 「へ~え、君はそんな事に頭を使えるタイプの妖怪じゃないだろうに。そこまでして、こいつの役に立ちたいのかい?」


 奴は俺の顔の頬を引っ張ると、ワザと馬鹿にするような仕草をした。友情が気に入らないと言っていたが、本当なのだろうか。


 「君は随分と隠れるだの、交渉だの、私のデータと大分違うのだが。陰陽師の聖地で山に引き籠り睨みを利かせて、あらゆる戦争に首を突っ込んできた本当の英雄だろう。捕獲不能の妖怪のプライドって物はないのかい?」


 「舐めるなよ、物の怪め。プライドなら残っている。貴様は知らないのか、ワシは七年目に妖怪になって初めて友達ができた。妖怪共には置いて行かれ、人間からは嫌われ、山から下りられなくなった。こんなワシに死にもの狂いで駆け寄ってきた人間がいた。ワシの中の価値観が変わったんじゃ、ワシは何を大切にして生きていくかという事が」


 烏天狗は思い詰めるように下を向き、目を瞑った。大切な物、守りたいもの。それは永遠に続く物ではない、時代の流れによって移りゆく物、そして消えていく物なのかもしれない。


 「ワシにとって大切な物は、この山でも、天狗である事でも、大妖怪である事でもない。誰に向かっても恥る事の無い、本物の友達がいる事だ」


 俺の七年前にやった行動は間違ってなかった、俺は奴を救うつもりで、無謀に立ち入り禁止の山に登り、本物のニートに言っても効果の無い無駄とも言える台詞を連呼して、散々迷惑をかけたあの俺の小学生時代の青春は、一匹狼というか一匹天狗を救う事に成功させていたのだ。


 「だから、助けてやってくれ。ワシの体でも、意識でも、肉体でも、…………命でもくれてやる。だから、そこの餓鬼を解放してくれないか。いい年した大人が学生を苛めるもんじゃないだろう。奴にも陰陽師を脱退させる、死ぬ前に貴様らに迷惑を掛けないように、ワシが言う」


 それは……、俺が陰陽師じゃなくなる、戦えなくなる。逃げる事と同義じゃないか。親友を失って、信念も失って、飛鳥との約束まで消え去ってしまう。それでは駄目だろう、でも条件次第では烏天狗が殺されてしまう。


 「えっと、この体に利用価値があるって何度も言ったよね」


 「ワシの体でも同じだけの効果は変わらんだろう、寧ろワシの方が奴より潜在能力は高いはずじゃ。妖怪としての不死身の体も手に入れられるだろう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ