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切札

そりゃそうだ、俺の存在は奴に取って楯も同然なのだから。俺に憑依したことで、リーダーや百鬼夜行はこいつを倒す時に仲間殺しを味わう事になる。以前の憑依されていた女性がどんな人間だったか知らないが、俺はそいつよりも殺す事に躊躇するだろうという魂胆なのだろう。仮に俺の仲間が殺す覚悟を決めたとしても、心の中の抵抗は避けられないということか。


 いや、寧ろさっぱり切り捨てられるかもしれないけど。


 「私に取って橇引行弓という体はかなり利用価値がある。君の我が儘のために、最高の切り札を削るわけにはいかないね。というわけで、却下だ。ごめんなさいだけど、君には彼を返せないな」


 だろうな、俺もそこまで都合行くとは思っていない。奴がいくらテキトウな性格で、気分屋だとしても条件が悪過ぎる。


 「そうか、ならば力ずくで奪い返すまでだ」


 「っぐぅ」


 烏天狗が締め付けるパワーを上げたようだ、下手に投げ技に走って取り逃がすのではなく、確実に仕留めるために。俺に痛みが共有していないので、奴に対してどれくらいのダメージになっているか分からないのだが。どうだろうか?


 「痛い、痛い。止めてよ、烏天狗。君の大切な橇引行弓君の骨が折れちゃうよ?」


 「構うものか、どうせ貴様は行弓ではないのだろう。貴様が行弓を解放したら、病院の前にでも恥を捨てて連れて行ってやる。よもやある程度のリスクは覚悟の上だ。ワシの務めは貴様から行弓を引き剥がす事じゃ。それさえ出来れば跡はどうでもいい」


 どうでもよくねーよ、解放された瞬間に俺の体が大被害じゃねーか。って言っても、そもそも綾文功刀との戦闘で戦う時に死ぬ覚悟をして、悪霊の妖力を吸収した俺が悪いので、それに対するむくいと思えば妥当かもしれないのだが。


 覚悟という物は瞬間的に効果があるものだ、持続性なんか期待されても困る。その瞬間にあった熱意が状況が変わった今でも持続はしていない。……とはいう物のこの状況に困っているのは事実。ここは諦めてまた新たに覚悟を決めるしかない。


 「なるほど、流石だねぇ。阿吽の呼吸っていうの? 君のご主人様さぁ、本当に私から解放されるためなら、多少の痛みを受ける覚悟をしたようだよ。凄いねェ、これは素直に驚いた」


 ……こいつ、やっぱり俺の言葉や感情が筒抜けなんじゃねーか。待てよ、これじゃあ今まで俺が呟いていた事が全て柵野栄助に、情報として聞かれていたという事じゃないか。駄目だ、考える事も駄目なのかよ。全て奴へ烏天狗の弱点を伝えているようなものじゃないか。


 ならば、奴は結局は烏天狗が隠れていた場所も分かっていたんじゃないか。どんだけふざけた野郎だ。分かっていて、この状況になるように仕向けたのか……。マズイ、烏天狗……、追い詰められているのは……あいつかも……。

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