表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
326/462

死戦

 「そろそろ出てこないかなぁ。かくれんぼはもっと刺激的な遊びであるべきだ。こんな静けさ漂う静寂に満ちたかくれんぼなんて面白くない。隠れている側も見つけてくれない、探す側も刺激が無い。これじゃあどいつもこいつも、大人ぶって『かくれんぼを卒業』しちゃうよね」


 また皮肉だ、奴はまるで世界を裏側から見つめているように、人間の行動を否定する。あらゆる観点を悪く受け取り、誰かの希望を他所で笑い、誰も聞いてないであろうはずなのに、人間を罵倒する。奴はいったい……、奴は何が原因で最強の憑依能力者になんてなったんだ?


 「栄助様、栄助様。奴め、現れませんね。卑怯にも隠れて出てきませんよ。このまま我々が諦めるのを待っているのでしょうか。それとも何かしらの反撃のチャンスを狙っているとか」


 「どっちも想定しているだろうが、奴の性格からおおむねまだ戦意は完全に喪失はしていないだろうね。さーて、じゃあそろそろ会話を止めて本気で炙り出そうか」


 あんな事を言っているが、烏天狗は動じない。例えどんな言葉を言われても反応しない。さすがは歴戦の勇者だ、相手の挑発に乗らないし、主義を優先して無謀な特攻もしない。だが、そもそも烏天狗がここまで追い詰められる状況が異常なのだ。本来ならこんなプライドを捨てた動きをする必要なんかないのだ。


 「……烏天狗。お前……」


 なんとなく分かる、奴がどうしてこんなに冷静でいられるのか。奴が最強クラスの妖怪としてプライドが高い、他の妖怪を支配している人間だろうが、同じ生物であり同じ階級である妖怪だろうが、いかに最強の悪霊だろうが。決して奴が『隠れる』なんて真似までして戦うはずがない。


 奴の本来なら、戦士として見っとも無い姿を見せまいと、ここを死戦とし戦うだろう。逃げるという選択肢が無い以上は、それ以外の選択肢が見当たらない。奴は逃げているのではない、戦闘意欲は現在もあるだろう。だが奴は死のうとはしてない。まるで何とかして、無様な醜態を晒しても、どんなに汚い手を使っても勝ちにいっている。


 「俺の為か……、まさか」


 奴はこの戦いに挑む前に、肩に何かを背負っている。俺の存在なのか、俺が世界からいなくなっていない事が分かってたから、まだ奴は俺を救う事を諦めていない。だから死のうとはしていないのだ。俺を無事に逃がすまでは、……死ねない。そう思っているのか……馬鹿野郎。


 俺は綾文功刀との戦いで本当なら死んでいたのだ、それか悪霊になっていたはずだ。それを奇跡とか偶然で意識だけが、まだ消滅していないだけだ。こんな死人同然の主失格の俺なんか捨てていればいいのに。


 そしたら最後のプライドだけは守れるのに……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ