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降伏

殺す? 奴はそう言ったのか?


 「…………貴様はワシにも牙を向くというのか? ふざけるのも大概にしろ。ワシは行弓が闘いから降りると言わない限りは諦めないと言ったはずだ。だから、ワシは行弓が復活するまでは死ぬわけにはいかない」


 「だからね。この人間の作り出した、偽善と欺瞞と茶番の押収で塗り固められた世界ではね。…………そういう台詞を『死亡フラグ』って言うんだよ。現実に冷めている人が大好きな言葉」


 ★

 烏天狗は逃げなかった。奴のスピードなら一気に上空へ飛び立てば、富士山だろうが、東京タワーだろうが、上等な避難場所になるはずだ。だが技術面の問題ではない、プライドの話だ。


 「ここはお前の山だ。ここから『逃げる』という事は所有権を放棄するという事。完全に私たち悪霊へ降伏する事を意味する」


 これは烏天狗が捕獲不能レベルの妖怪である事が重要なのではない。もっと大切なのは奴が天狗であるという事だ。天狗は習性として一つの山を『我が物』として初めて一人前となる。領土を守る事が重要な事なのだ。


 それを失う事は、天狗としては死罪も同じ。まして敵軍から逃れる為に逃げたとでもあったら、もう奴はプライドは愚か、妖怪としての使命を真っ当できないのも同じだ。


 この天狗の悪しき制度は陰陽師が無理矢理に管理することで、どうにか今までは解消してきた。天狗を式神に持った陰陽師は、その烏天狗の地元から離れるべきだという思想まである。


 自慢にはならないのだが、俺は天狗については詳しい方だと思っている。式神であるからという理由もだが、俺は奴に会う為にこれでもかというほどに、『天狗』を研究したのだ。5年以上も経つ今でも、その殆どの知識が俺の脳から消えてはいない。俺はそれくらい本気だった。


 「に乗るのも大概にしろよ、物の怪が。ここは我が神聖地。このワシが最も本領の発揮しやすい場所じゃ。地の利はワシにある」


 「調子に乗っているのはお前だ、烏天狗。我々、レベル3の悪霊を三体も相手にして勝機があるとでも思っているのか? どんな戦況の分からない馬鹿でも、この勝負の結末くらい予言できる。そもそも『地の利』とかさぁ、今どきのバトル漫画じゃ流行らないよ、そんなの。もうちょっと現実的な力比べをしようぜ、最強クラスの妖怪さん」


 確かにいくら烏天狗でも相手が悪すぎる。少なくとも相手には、『回避』の能力を司る面来染部がいる。旋風攻撃はおろか打撃すら真面にあたるとは思えない。また実力が未知数の久留間点滅という奴がいる。あのへらへら笑っている野郎は『防御』特化であるらしい、試しに攻撃が当たったとしてダメージとなるのか。


 さらに奴等には史上最悪の悪霊である柵野栄助が存在する。

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