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女神

暫くの雰囲気が悪くなるような沈黙が続いた。烏天狗も俺と同じくらいに不可解に感じたはずだ。悪霊にとって人間は敵か、餌かにしか思われてないのは分かるが。悪霊という生き物は妖怪に対してはどういう感情を抱いているのだろうか。それは考えた事がなかった。操られているとはいえ、直接攻撃してくる奴等も敵だと思うのが順当と思うが。


 「降りろだと……この戦いから……。それを俺に言うのか。物の怪のおさよ。橇引行弓の式神たるわしに。わしが闘いから降りるのは、我が主が身の撤退を覚悟してからだ、わしは奴が『逃げる』というまでは逃げない」


 烏天狗、俺はお前とそういう関係になりたかった訳じゃない。お前と主従関係を作りたかったんじゃないんだ。俺はお前と友達になりたかった。それだけの感情は、五年以上経った今でも変わらない。俺はお前を救いたかった、それが俺の望みだった。


 俺はお前を……。


 「じゃあ君の主人がもう死んでいるとしたら?」


 「何っ!!」


 俺が死んでいるだと、ふざけるな。俺はこうして意識がある。確かに体は動かないが、考える事が出来るし、視界はある。それでも俺が死んでいるとでも言うのか。俺はちゃんとここにいるのだ。


 「行弓は死んでいるのか?」


 必死な声だった、まるで自分のことのように。今までのクールな感じの悪さが一瞬にして消えた。これでは今までの威厳が消えてしまうかもしれない。それでもこれが自然みたいに感じる。


 「死んでいないよ、死んでない。橇引行弓はしっかり生きているよ。私の隔離した世界に中でね。というか本当に殺したくても殺せないんだ。私は史上最強の悪霊。そして象徴すべき能力は『憑依』だ。憑依とは元の人間が死んでしまったら成り立たないんだよ。それが弱点で、前回に憑依した女の子は殺された。そして捕まった」


 ……そうだったな、前回に憑依された奴はそれで……。


 「わしに関係無い事を話すな。ワシが聞きたいのは橇引行弓の安否だけだ。それさえ確認できれば構わない」


 「いやいや、聞けよ。私の華麗なる自慢話。私が今回に『橇引行弓』に憑依できたのは、全くの偶然だ。これは私の計算や能力は関係ない。この世に女神なんぞいるなら、きっとそれはあの瞬間に私に微笑んだのだろう」


 そうだよな、相良の中に俺が入ったのは間違いなく偶然だったはずだ。


 「私はその微笑みによって、音無晴香への対抗策を得た。この体の持ち主である橇引行弓は音無晴香の部下だそうじゃないか。これは好都合だ、私を殺そうとするならば、この子も殺さなくてはならない」


 俺が、音無晴香の……部下……。俺の今の上司って言ったら。百鬼夜行の面々だけだ。だから……奴は百鬼夜行との戦闘を模してこんな事を言っているのか。つまり音無晴香は俺の上司……悪霊……。名前……。


 まさか…………リーダー?

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