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立入

「栄助様、ご復活を祝してオメデトウございます。これで悪霊の絶滅も阻止できるかも。もう本当に良かったです。やったぁ、やったぁ」


 「おいおい、止めておけよ。恥ずかしいだろ、全くお前は悪霊らしくない奴だな。まあ悲しいね、残った生き残りが『防御』と『回避』か。まったく身を守るすべが無いと生き残れなかったなんて。音無晴香……、奴を殺さない限り、人類に絶望は無いか」


 だからそいつはいったい何なんだよ、その音無晴香っていう奴は。俺達の味方なのか、それとも敵なのか。


 「それにしてもですよ、面来染部さん。さっきランニングしていた時に思ったんですけど。この山って、なんか特殊なんですね。下の空間はいたる所に結界が張ってました。至る所に陰陽師の妖力を感じれました、プロテクトをしないと包囲されそうでしたよ。まあ喧嘩すれば勝てますけど、面来さんから派手に動くなって言われてましたから焦りました。しかも『keep out』て看板もあって。この山ってなんですか?」


 『keep out』、つまりは『立ち入り禁止』の意味だ。山の下に陰陽師がたむろっていて、それでいて山の中に干渉していない。この設定は……まさか。


 「ここはねぇ、笠松町という場所にある神聖な御山でねえ。ある強力な手に負えない大妖怪を祭っているんだよ。まあ今は諸事情でお出かけしているのだけど、それでもこの山に足を踏み入れないなんて、よほど烏天狗が怖いみたいだね」


 やっぱり、ここは俺が産まれた故郷である笠松町なのか。それも俺が烏天狗に出会った山だ、間違いない。俺でもここに立ち寄るのは久し振りだ。実に何年ぶりだろうか。だが、思い出に浸っている余裕はない。


 「なるほど、それで僕らが隠れて秘密会議するにはうってつけって訳ですね。分かります」


 さっきから五月蠅いな、あの久留間点滅って野郎。餓鬼臭いというか、お喋りが鬱陶しいというか。なんかイメージとしては『かまってちゃん』みたいな感じがする。あんな目立つ野郎が生き残ったのか、それほど防御力に長けているのだろうか。


 「勿論、それがメインの理由もあるんだけどさぁ。先に済ませたい事があるのですよ~、ってあれ? マズイ、また眠くなってきた。ちゃっちゃと済ませようか。出ておいで、烏天狗!!」


 烏天狗を御札から出した。綾文功刀と戦った時にも火車を使っていたから、烏天狗をお札から取り出せる事は驚かないのだが。奴等の行動がいまいち統一性が無く、先読みが出来なくてびっくりするのだ。


 「…………何の様だ。物の怪よ。貴様の指示など受けんぞ。貴様は行弓ではないからな」


 やっぱり烏天狗も火車と同様に俺が俺じゃない事に気が付いている。そして機嫌悪くて、不貞腐れている。いや、あの機嫌の悪さはいつも通りか。むしろ俺がえらいことになっているのに、取り乱さずに平然としている事が少しむかつく。


 「いやいや、命令とか~しないよ~。ヤバい眠い。これは私からのグッドな提案ですよ」


 ……、まただ。毎回毎回。こいつらの発想にはついていけない、悪霊が感情を持つと、こんな風になるのか。もうカオス以外の表現が見つからないよ。それで提案って何だ?


 「お前さぁ。この戦いから降りてくれない?」

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