植物
どうしたらいいのか? そんな事は分からない。俺は自分がそんなに強い人間ではない事を知っている。肉体的にも精神的にもな。俺には持っていない物が多すぎる、欠けている物があまりに多い。
今回の闘いで大切な物を失った、俺の肉体の支配権。そんな当たり前な物を大切な物の枠の中に入れている人間なんか、この世にいやしないと思うのだが。実際に体験してみると、ここまで自分を思うように動かせないというのは怖い物なのか。漫画で良くあるように、強い思いや精神で肉体を奪い返すなんて考えたのだが。そう上手くいく程、簡単じゃなかった。
なんというか硬い扉が開かないというか、野球でいうところの空振りを続けているという感覚だ。ビクともしないというのではなく、手ごたえが無いという感じかな。だからと言って、視界を覗くこと以外にするべきことが無い俺には、何もかもが空虚だった。
植物人間にでもなった気分だ、と言ったら勝手だろうか。それでも俺にはどうしようもない悔しさだけが、頭に植え付けられていた。体を憑依され乗っ取られて、何もかもを失った。
そりゃあ、理事長と鶴見の命は助かっただろう。綾文功刀も結果的には倒す事ができた。でもそれが何だという話である。最悪の悪霊と噂させる柵野栄助を復活させてしまったならば、意味が無いじゃないか。しかも格納庫にあった魂まで何個か食べられたし。まさに最悪だと言ってもいい。
俺が意地を張ったからだ、とは思いたくないが、そうとしか言えないかもしれない。俺がもっと真面な犠牲になっていれば、格納庫の魂を守れつつ、奴の復活を阻止できたかもしれない。追継の意見に従うべきだったのだ、意地を張って綾文功刀の意思を守るとか言って、結局は守る事は叶わずに、肉体まで失ってしまったのだ。
泣きっ面に蜂、弱り目に祟り目。正しいと判断してやった自分勝手な行動が世界を最大のピンチへと追い込んだ。もうどこの誰に馬鹿にされても、反論などできないな。
何で、こんなおよそ意味の無い事をグダグダと負け惜しみのように叫んでいるかというと、…………暇だからである。一通り悲しんで、後悔と反省と戒めを繰り返し、これでもかという程までに自己嫌悪したうえで、暇になった。
奴が視界を閉じると俺まで真っ暗なのだ。奴が『眠い』とか喋っていたのは、また適当なお喋りかと思いきや、本気だったらしい。監禁生活での昼寝しすぎでタイムスケジュールが狂っているのかもしれない。俺としては只の迷惑だ、今は少しでも情報が欲しいのに。つーか、あいつはどこで眠ってやがる。
これから俺はどうなるのだ……。