表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
313/462

挙句

違う、断じて違う、こいつは橇引行弓じゃない。橇引行弓は俺だ。


 なのにどうして奴は、あんなにも平然と嘘がつけるのだろうか。俺の体を乗っ取った挙句、まさか格納庫の中に入っていた魂を食べるなんて。完全に化け物というか、もうモンスターじゃないですか。


 「止めて下さいよ。何でそんなものを頬張っているのですか。それは食べていいものではありませんよ」


 言葉を必死に選んだのだろう、叫びたい気持ちを必死に押し殺したのであろう。でなきゃあの精神状態でこんな言葉を言えない。下手に刺激せずに行動を止めさせるために、怒らせずに困らせる。そんな『言葉つがい』だった。だが、……。


 「だって、食べたらさぁ。こいつらの残したいにしえの力を全て手に入れるって事じゃないですか。そんな代物は食べるに決まっているでしょう。というか、俺は綾文功刀を倒して理由だって、魂を横取りするためだったし」


 もう無茶苦茶だ、気色悪いとかいう次元を超越している。現に俺のもう一つの人格は古今東西の魂を平らげるのを止めようとはしていない。


 「お兄さんを返して下さい。あなたは絶対にお兄さんではありません、橇引行弓ではありません。あなたは綾文功刀の妖力を吸収したせいで、訳の分からない『何か』ですよ。お兄さんのフリをしないで下さい」


 いや、やはり恐怖で言葉が選べなくなっている。これはもしかしたらもう一人の俺の人格を一気に怒らせるかもしれない。止めておけ、追継。今の俺は訳の分からない強さを誇る、昔の俺とは全く違う存在だ。悔しい気持ちは分かるが、ここは奴を刺激してはならない。きっとリーダーがどうにかしてくれるはずだ。


 俺が視界から目を離した瞬間に、俺の体が吹っ飛んだ。俺に痛みは無いのだが、意識のみは共有していないので、体への違和感は掴める。何かから突き上げられた感覚だ。攻撃を受けた……? いったい、どこから、誰から? 


 「痛いじゃないか。何をするんだよ、おっさん」


 俺も両目から攻撃した奴を探す、そこにいたのは……脇腹を抑えて口から血を流し、壁に寄りかかって辛うじて立っている理事長先生こと渡島搭吾だった。俺を突き上げられた犯人も特定できた。あれは、麒麟? まさか、こんな場所に。確か麒麟はリーダーの式神だったはずだ、それをどうして持っている……。


 事情が全て呑み込めた訳ではないが、何はともあれ助かった。理事長は確かレベル3の悪霊を研究しているくらいの人だ。傷を負っているようだが、麒麟がいるなら俺を倒せるかもしれない……、いやでも無理か。あの人は綾文功刀に勝てなかったのだから。まあ通常的に打算したら難しいかもしれない。


 仮に殺せても意識の中の俺までも、殺されたら溜まったもんじゃない。だが、漫画のように都合よく心の中の俺だけを残してやっつけるなんて可能だろうか。難易度は高まる一方だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ