妖刀
どうやら妖刀が部長の体に憑依した。つまり部長が先生として俺を鍛えてくれるらしい。
「納得出来るか!! 今すぐ部長から離れろ!!」
そもそもである。陰陽師の第二優先事項は一般人に異能の存在を確認させないのはず。それを憑依とか規則違反にもほどがある。飛鳥はなぜこんな人でもない先生を俺に差し向けたんだ? これはあんまりだろう。
「いやぁ、マジいいわー、女の子」
なんか先生が聞き捨てならない台詞を言っている。なんか涙ながらに自分で自分の体を触ろうとしている。
「おい、それはあかんだろ!!」
「ったく、五月蠅い餓鬼だなー。馬鹿みたいな顔しているくせに」
「してねーよ、失礼だろ!!」
「あー、分かった、分かった。お前の言いたいことはだいたい分かった。これ以上醜い嫉妬は止めろ。男としての株を下げるぞ、小童」
全力で口論したい気持ちは山々なのだが、このままじゃ拉致があかない。上から目線でイラつく野郎だが、あの飛鳥が指名した先生だ。きっと新人育成のエキスパートに違いない。よし、まずは下手に出てやろう。
「あのー、先生。お話については聞いていらっしゃいますでしょうか」
「あぁ、百鬼夜行についてだろー。知らない奴の方が少ないぜ」
何だって、何故先生が百鬼夜行の名前を。内の流派以外にも知れ渡っているのか。
「丁度な、一週間くらい前の話だ。俺も式神として主と仕事していたんだよ。近くの廃病院の後始末さ。チームで行動していたから、陰陽師が六人、式神も二十体はいたよ。仕事自体は予定通りに進み、さあ帰ろうって時にだ。突如、変な服した奴が現れてよお。自分は百鬼夜行のメンバーだとか、式神を解放しろだの訳の分からないこと言ってきたな。仲間の一人が我慢の限界がきて、バトルが始まったんだが……」
「それでどうなったんですか」
「小隊は全滅。六人は病院送り。俺以外の式神は全部捕まった」
捕まった? 可笑しいにもほどがある。だって式神は本来、契約した陰陽師にしか従えない。他人の式神を奪うなんて話は聞いたことが無い。しかも、プロの陰陽師であろう相手に、六対一で勝利するなんて。
「どんな野郎だったんですか」
「音波を使った攻撃を主軸にしてやがった。全く知らねー音楽をラジオで流しながら、踊るように戦うんだ。そうそう、ありゃ、日本人でもなかったぞ、あれ」
「はあ?日本以外に陰陽師が存在する訳ないいでしょ」
「いや本当に黒色人種だったんだって。日本語はかなり上手かったけど」
どうやら追継とは別の人間のようだが、そんな奴、想像がつかない。
「俺は咄嗟にヤベぇと感じて鞘に隠れたんだ。この鞘は封印術の効果があってな」
そう言うと鞘から刀身を見せ、鞘の方を俺に投げた。
「とにかく百鬼夜行って連中はかなりやばい。お前らの流派は平和呆けしてやがる。一刻も早く対策を練らなきゃ日本中の式神があいつ等に奪われるぞ!!」