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主婦

綾文功刀の弱さは、相手が弱ければ弱い程に、弱体化してしまう事だ……と思う。現に俺が素手で奴の攻撃を受け止められたという事は、やはり俺の想像は正しかったのだ。


 「あんたの操作能力は、普通に機能すれば現状がこの程度の被害じゃないはずなんだ。あんたは自分の中で勝手に能力をセーブして発動していた」


 ……喋らない、顔を引き攣らせて今にも泣きだしそうな顔をして、全く反応を示さない。どこまでが図星だったのだろう。もし、俺が指摘してしまったことにより、無意識のパワーセーブを解いて、本来のパワーを取り戻したりすると、俺は間違いなく即死するのだが。突然に暴れないで欲しい。


 「あのー、えっと、この体制ってお互いに不自然だと思うので……そろそろ距離を取りませんか?」


 「……っているか?」


 遂に綾文功刀が口を動かした。俺を今にも殴りつけようとするポーズは変わらないけどな。これでは次の瞬間に何が起こっても可笑しくない、この距離ではな。怖いから本当にこの拘束を解きたいのだが。まあ握り締めているのは俺だがな。


 「知っているか? 私は君が思っているような使用人なんて、そんな生活はしていないよ。奴隷ではあったけど、別に奴隷だと周りから思われていた訳でもない。私はその辺のただの専業主婦だったんだ」


 …………えっと……、もしかして俺ってまた的外れな事を言っていたのかな。でも奴の反応から考えてそんなに間違っていないと思うけど。ってか、専業主婦って、まじかよ。ってことは奴は悪霊になってからそんなに時間が経っていないのか? 確かにレベル3の悪霊が現れたのは、ここ最近の話だと聞いた。確かにこの日本国憲法がある日本で、そんな奴隷生活なんかできないか。


 「っていうか、前世がただの主婦が世界の支配者になろうとしていたのかよ。ここにきてまたビックリだよ!!」


 「ただの主婦? けっけっけ。馬鹿にするな、これでも私は理不尽な世界で、大切な物を守りと通した人間だ。君は私よりも少しだけ前の世代に産まれた人間でね。これでもあのまま生きていたら、君と生きたまま会う機会もあったかもしれない。だが、私は殺された」


 殺された、こいつは誰に殺されたんだよ。誰のせいで悪霊になったんだ。


 「私は私の夫に殺されたんだ。私は散々、亭主関白な夫に利用されてきて死んだ」


 …………え…………。夫に殺されたって。そんな馬鹿な。俺はてっきりどこぞの殿様の家来とか、王国の奴隷とか、もっとスケールの大きい事を考えていたのに。なんだよ、そのありふれた感じの怨念は。

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