品定め
「やっと分かった。あんたの奇怪な行動の正体が。これで全てが説明が着く。この仮説が正解だとすれば、あんたは弱い。能力が弱いとか、悪霊としてのキャパシティとか、そんな事は関係なく、あんたは弱い」
両手の痛みが消えてきた、俺は回復能力を持っては無いので完全に完治する事は出来ないが、痛みにさえ我慢すれば剣は握れる。
「弱い? また探偵ごっこかい? 反撃のチャンスをくれてやろうと見過ごしてやっていたら、君はまたそんな的外れな事を言うのかい?」
意識が戻ってっ来た、落ち着きを取り戻せてきた。こいつが何に苦しんでいて、何が生前に叶わなくて、何に対し復讐しようとしているのか。
「私は君の仲間を二人も倒した。陰陽師の中でもトップの強度を誇る御門城勤務の陰陽師も全員倒した。今の私なら晴香ちゃんにだって負けない。私はこの世の全ての頂点に君臨する史上最強の悪霊です。その私に……弱い? この私が? どうしてそんな台詞を君みたいな、貧相で脆弱で非力で無力な、君みたいな雑魚にいわれなくちゃいけないんだ」
怒ったのか……そりゃ怒っただろうな。俺は踏んではいけない地雷を自ら踏んだのだから、自らの意思で。
「私だって、馬鹿じゃない。一応ね、操作能力者なんてしているから得意なんだよ、『品定め』って奴。君自身は陰陽師として強くない。晴香ちゃんからの『御情け』で手持ちの妖怪だけは天下一級品なのは分かるが、そのスペックに君は完全についていっていない。その両手の傷が良い証拠だ。君こそ弱い人間だ」
その通り、大正解ですよ。綾文功刀さん。俺が弱い事など百も承知だったんですねぇ。まあこっちも隠せるとか思ってないけど。むしろ油断とか、手加減とか期待しているんだけど。
「何を思っているのか知らないが、そろそろ茶番にも飽きた。殺させて貰うよ」
「やってみろよ、出来るものならなぁ」
俺の実力を確認してなお、奴の能力や強さを考慮したとしても、やはり俺は挑発を止めない。俺なら勝てる、いや俺にしか勝てない。奴は俺にしか仕留められない。
俺は奴に対し、山椒魚の倒す前にかなり無謀な作戦を立てた。だが、そいつも加味した上で俺に負ける道理が無い。奴の洗脳能力は俺には通じない。奴の強度も俺には通じない。奴は侵略者なんかじゃなかったんだ。
「はぁ? 君はこの私を挑発していますか? この全生物の頂点である私に?」
「もうそんな質問の押収はいいんだよ。そろそろいくぜ、綾文功刀。今からお前が本当に望んでいる事をしてやるよ」