表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
296/462

目隠し

「いくぞ、火車。烏天狗!!」


 俺は蓮柱を山椒魚に目掛けて下から振り上げた。俺の弱点は持続力であり、俺の長所は烏天狗による短時間での爆発的な妖力拡大である。勿論、使い勝手は非常に悪い。刃先に烏天狗の妖力を集中させて、安定して留めなければならない。さらにタイミングが重要だ、早すぎては妖力を垂れ流し消えてしまう、遅すぎてはガードにならない。


 「馬鹿な、もう妖力は現界だったはずだ。行弓君の式神から妖力を供給したのか。それにしてもあんなに威力が出るものかよ。完全な攻撃体制のはんさぎを切り裂くなんて」


 綾文功刀が焦り始めた、未知の動きをする人間がそんなに不思議かよ。俺なんか毎回、そんな気分を味わっているけどな。俺の繰り出した攻撃は辛うじて上手くヒットした。山椒魚は後方へ打っ飛んでいく。肩から腹を真っ二つにしたのだが、数秒でダメージは消えてしまう。烏天狗とのコンボじゃ奴を攻略はできない。


 山椒魚の体制を立て直して、攻撃に復帰するタイミングは想像絶するほど早かった。後ろ脚が平たいからだろうか、だが関係ない。俺には今まで使った事のない、鬼神スキルが一つある。


 「鬼神スキル、『曇裾くもりずそ』!!」


 前方の山椒魚に向かって握り締めていた剣を投げつけた、蓮柱は一瞬にして分解してバラバラの御札の状態に戻る。この曇裾の能力は槌楯のようにお札の状態で効果が発揮する。効果はただの……目晦ましだ。ただお札の一枚一枚が十倍に増えていくだけの、何の攻撃力も無い技だ。ただの紙切れと化したお札に防御力も無い。だから今までの闘いで効果を発揮できる奴が少なかった。習得したのは正宗先生との修行中だったのだが、自らが接近戦はしない相手が多かったから。


 こいつは回避能力だと俺は捉えている。ただの強大な喰らったら確実に致命傷だと思われる一撃を。タイミングとしては、あと一撃で勝てるという時に使うのだ。奴が一瞬でも俺を見失えばそれでいい。視界に邪魔なお札を払い除けるために、手を動かすという、その動作の時間で十分だ。


 その動作のお陰で奴のふところへ潜り込めた。


 「終わりだ、化け物!! いつまでも操られているなぁ!!」


 武器を失った俺だったが、まだ俺には両手が残っている。右手と左手をパーの状態にして左右に重ね、烏天狗から貰った妖力を手の平に注入した。そして腰を曲げると奴の広いドテッパラが丸見えである。動作が速い割に隙だらけなんだよ。

 

 思いっきり足を踏み込むと全体重を乗せるように両手を突き出した。鈍い炸裂音と共に奴はまた後方へ飛んでいく。今度ははっきり蛙の鳴き声ような悲鳴が聞こえた。そして放り込んだ先には、追継によって入口が開かれた格納庫が。


 俺の平手の衝撃を緩和できずに中へ入った山椒魚。まるで呻き声をあげながら、仰向けにのた打ち回る。そりゃ痛いだろうな、俺の攻撃によるダメージはその空間では消えないのだから。


 奴の再生力のカラクリは悪霊の妖力にある。だからその妖力が発揮できない場所なら、決して無敵ではない。それだけではない、格納庫は絶対に悪霊を侵入を許さない場所だ。その空間には悪霊が平常に保っていられる場所ではないのだ。


 山椒魚の全身から血が噴き出る、まるで体の模様であった赤い花弁が散っていくようだ。さらに追継が容赦なく狐火を浴びせる。躱す体力も無ければ、体の炎を掻き消す力も残っていないようだ。そのまま少しすると動かなくなり、焼かれて完全に消滅した。


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ