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直球

綾文功刀が次のアクションを開始した。


 「じゃあ早速だけど、魂をありったけ持ってきてくれるかな」


 さてと、困った困った。いきなり直球を投げてくるなんて。それに交渉というか、命令じゃないか。こちらとの物々交換だの、条件での動きだのする気なんかないんじゃないか。


 「待てよ。俺達がお前の手助けをして、何のメリットがある。仮にお前の要求通りに動いたとして、俺達が格納庫から大人しく出てくるなんて可能性はないだろ。『立て籠もる』っていう意味だ。御門城での戦闘が終結したなら、救援隊がすぐさまこっちへ来るはずだ。お前を捉えにな、安全に時間を稼がせてくれるなら、願ったり叶ったりだ」


 黙っていれば奴は立て籠もるという発想を思いつかなったかもしれない、昔の俺ならそう思い行動していただろう。そしていつも予想は裏切られて失敗してきた。俺は現実を楽観視しない、奴はここまで余裕の動きができるのだ。気付いていないはずがない。


 「メリットなら話したはずだ、人質解放だよ。君の仲間が助かり、君達の命も助かる。これがメリットだ」


 妖艶な声でそう言い放った。奴は間違いなく残虐な精神の持ち主だ。俺達を殺す事に抵抗なんかないし、計算の中に入れているはずだ。


 「救援を待つために時間稼ぎか、まあそんな事を考えているんじゃないかと思っていたよ。でもさぁ、大丈夫。それはそれで私の作戦通りなんだ」

 

 作戦……、そうか。やっと俺の頭の中での答案用紙がまとまった。さっきまで俺は馬鹿みたいに突っ立っていた訳ではない。面来染部に会った時からずっと考えていた、牛頭鬼と馬頭鬼と戦っている最中も考えていた。…………では、始めよう。この俺の戦いを。答え合わせをして貰おうじゃないか。


 「追継、お前は今すぐ格納庫へ向かってくれ。大丈夫だ、これから俺がお前の親父おやじと鶴見を持ってそっちへ行く。先に行って待っていてくれないか」


 「お兄さん、正気ですか。私もいた方が……。いえ、すみません。交渉の邪魔なんですね、私がここにいたら不意打ちが怖いとかですか。分かりました、でも危なくなったら助けに行くので、格納庫まで響くように大声で叫んで下さい」


 そういうと、追継は格納庫へ向かって歩き出した。その間に俺が奴の身の安全のために綾文くに偽と話終えなくてはならない。


 「おい、悪霊。お前の要求を呑んでやる。だが、二人いっぺんに中に入ったら、コンタクトが取れない可能性もあるだろう。俺がこの場に残る、殺したきゃ殺せ。だがちょっと今からお前に言いたいことがある」


 奴の目には俺達が素直に魂を取ってくるようにうつってないだろう。だが、これでいい。奴と俺が話し合えれば。


 「けっけっけ。いいねぇ、お喋り。私も大好きだよ、見知らぬ敵対している人間との会話。さぁ、君は私をなんと言って笑わせてくれんだい?」


 笑わせる? そんな面白い事を言う気はない。時間稼ぎのつもりもないし、命乞いをする気もない。これは俺が俺の仲間を守るための言葉だ。追継がしっかり格納庫に入ったのを目で確認すると、俺は喋り始めた。


 「頭の中に何か引っかかる事がある。お前の特徴が『操作』であることだ。俺が以前に襲われた面来染部という悪霊も似たような現象を起こそうとしていた。能力を付与することで、その力を手に入れた相手も悪霊になるという現象だ。お前が洗脳した後の人間が無事だとは思えない、妖力が悪霊仕様に変わっているのがいい証拠だ。つまり、お前の洗脳の力は一つじゃない。本来のレベル3の悪霊として備わっている奴と、お前自身の特殊能力。二つ存在するんだ」

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