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とうとう本格的に喧嘩し始めた二体。狂気に満ちたその二体は怒りの矛先がお互いに向いている。まあ随分と悠長に仲間割れしている、俺達としてはいい具合に時間が稼げて大助かりだ。
「追継。お前、ここまで考えていたのか。わざわざ牛頭鬼に化けて、牛頭鬼を攻撃してってそんだけでここまで状況が一転するとはな。それにしても助かったぜ。ありがとう」
「お礼なんかいらない。元々、私の任務はお兄さんと同じでこの二体の足止めでしたから。私は自分の任務を忠実に実行しただけですよ。それよりもお父さんと鶴見さんには迅速に綾文功刀を浄化して欲しいものです。あの二体があの様子では、まだ山椒魚の撃退は済んでないようですね」
あの二体は操られている、だからあらぬ力を手に入れて暴走している。喧嘩しているのは、操られているのは関係ないように感じるが。あの二人、手間取っているのか。俺なんてレベル3の悪霊の撃退なんて方法を知らないどころか、イメージすら湧かない。理事長が口ぶりから知っているような事を言っていたから、安心してもいいような気もするが。
「この喧嘩も無限に続くわけじゃない。次の手を考えとかないと」
「そうですね。二人が正気に戻られたら、それこそ収集が着かないですから。私達を殺しに来てくれるなら、逃げるだけですが。もし綾文功刀の護衛に向かったら、洒落になりません」
それにしても綾文功刀か。山椒魚の姿が本体だとも思えない。サイズから推測するに、まだあれが本体とも思えないが。実は奴の実態も見てみたかったな。まあこの状況からそんな余裕はないのだが。
「お兄さん、取り敢えずは通り道に罠でも張ろうかなと考えているのですが。どうでしょうか」
「そうだな、今の俺達に出来る最善の事をしよう」
俺と追継は行動を開始した。もし牛頭鬼と馬頭鬼が綾文功刀の方へ移動した時の事を考えて、通るルートに罠を設置する作戦だ。時間が上手く稼げればいいが、無駄かもしれない。だが何もしないよりはマシだ。
それにしても綾文功刀の操作の能力だが、随分と欠陥だらけだな。思ったよりも相手を洗脳出来ていないような気がする。面来染部の回避能力が完璧だったが故にどうもインパクトが無い。喧嘩して命令無視なんてどうも洗脳できている気がしない。
「お兄さん、どうしました? 任務中に余計な事を考えないで下さい」
そうなんだけど、気になるというか、なんというか。もしかしたらあまりに多くの奴を洗脳させて、拡散させすぎているだけに、一人一人に与えるパワーが下がているのか。どうも奴の能力には縛りがあるらしい。
「お兄さん、その地点です。着地して下さい。鬼神スキルで落とし穴を設置します。お兄さんは奴らが来ないように見張っていて下さい」