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誘導

妖怪のみを淘汰する場合にする行為で一番の近道は、文献を調べる事である。妖怪には英雄伝みたいな本に登場する者が少なくない、そしてそこで英雄がおこなった撃退方法が存在する。案外それが現代でも攻略の糸口になるのだ。


 だが、牛頭鬼にも馬頭鬼にもこれといった逸話がない、まして退治したなんて話は聞いたことが無い。理由は奴等が一時期に地獄の門番をしていたからだ。地獄の罪人を取り締まる上で欠かせないのは、圧倒的な強さだ。どうやったって敵わない、従うしかない。そう思わせる必要がある。


 だからあの二体は弱点だの攻略法だのが出回る事はなかったのだ。弱いという印象を持たせるような真似は出来なかったのである。門番ならではの特権である。


 「じゃあこの四人で二手に別れて、一体ずつを相手取るしかないな。それよりまずはあの二体をどうやって切り離す事を考えないと……」


 簡単に考えてみたが、やはり誘導しかないと思う。打撃で飛んでいくほどあいつらは体重が軽くない。鶴見の憑依装甲の提灯突進なら可能性はあるかもしれないが、両手両足がある奴らがノーガードで喰らってくれるとは思えない。


 誘導なら俺のバイクが最適だ。機動力だけならこの中でも一番の自信がある。奴等の動きを先ほど確認したが、まあ逃げるだけなら十分可能である。だが、引き付けることが目的であって、逃げる事が目的じゃない。何より一歩間違えて、掴まりでもしたら……死ぬ。だからこそ、今俺は黙っている。


 「じゃあ、取り敢えずお兄さんを一人で特攻させてみましょうか。相手にされないという事はないでしょう。二匹付いて行ったら安心して綾文功刀にトドメが指せます。一匹付いて行ったら、作戦終了までお兄さんは逃げ回ればいいでしょう、その一匹を封じ込めつつ、出来るだけこの場から離れて下さい」


 そっか、別にあの二体を倒そうとか考えなくてもいいからな、って俺が殺されるリスクが伴うじゃないか。あんな化け物の二体から逃げ切るなんて、……可能ってだけで楽勝じゃないぞ。死ぬ覚悟が必要なんだぞ。


 「まあ、奴は我々を洗脳すると言っていました。万が一掴まっても問題は無いでしょう」


 馬鹿野郎!! 奴がどういう風に思っているかなんて分からないだろ。もしかしたら、『橇引行弓? そいつはいいや』とか思っているかもしれないだろうが。安全だって保障がどこにある!! それ以前に死にはしないとしても、骨とか内臓とかへのダメージを考えて、加減してくれる連中だとは思えないんだ。


 やめろ、鶴見。そのウルウルした目で俺を見るな。理事長も何を満足げに頷いているのだ、お前の生徒が死の危険の直面しているのだぞ。


 「ではお願いしても……いいですよね」


 「……は…い」


 俺は逃げ……ない、飛鳥とそう約束したのだ。俺は仲間を守る、そう自分自身に約束した。だから……頼まれたら、断れない。……死ぬ気上等だ、逃げ切ってやるよ!!

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