対策
三話っす
いままでのあらすじ。三年ぶりに式神と契約した。それが原因で怪しい陰陽師機関に勧誘された。その機関の名前を百鬼夜行というらしい。どうも俺のように妖怪と仲良くすることを基本理念に置く、まだ正式に認められていない集団だ。その六人のメンバーの一人は、俺の過去の仕事仲間である振払追継の孫、二代目振払追継。わざわざ、俺を精神的に追い詰めてまで、俺をメンバーに加えようとした。一応断ったが、再開は必須。しかし、誰からの援助や、保護もない。つまりここから導き出される方程式は。
「修行か」
なんて、いつも通りの部室でそう呟いてみた。俺の名は橇引行弓。通り名は、特に何もしない陰陽師。落ち毀れであるが故に機関から捨てられた、仕事を何もしないくせに、知識と妖力だけ持っている、イレギュラー陰陽師だ。俺は地元の高校でオカルト研究部に所属している。
そんな俺だが、現在身の危険に晒されている。怪しい機関が俺をスカウトしようと狙っているのだ。誰の力も借りれない状況化にあり、敵がいつ攻めてくるか分かったもんじゃない。だから俺は考えた。自分の身は自分で守ろうと。だが、およそ戦闘経験もなく、妖力の才能も無い俺が、大妖怪とタッグを組み、なおかつ大御所の連中からの逆風を物ともしないような、全員追継クラスの実力者軍団であろう連中に、まともに戦って勝てる訳がない。
ならどう対策すべきか。真っ先にどう逃げようか考えた俺だったが、そもそも俺は高校生であり、別に今の期間が夏休みなどの、大型連休じゃない時点でこの案は破棄。もう一度、飛鳥に援助を求めてみたが、やはり無駄だった。助けないと、キッパリ言われた。
しかし、飛鳥さんも鬼ではない。なんと俺を新しく教育してくれる先生を用意してくれるそうだ。そこで修行して、自分の身を守れるようになれ、そう言われた。
だが少し考えて欲しい。特に何もしない陰陽師たるこの俺が? 先生と修行? ありないだろ、うん。俺のキャラクター崩壊だよ。だいたい才能無いのに努力するなんて何の意味があるのだろうか。きっと無駄な抵抗だ、あいつらに敵う訳がない。って、飛鳥に言ってみたら殴られた。
「部長、もう俺の個性が無くなりそうです」
「いやいや、君は実に諦めの早い男だ。最後まで粘り続ければ、夢は叶うぞ。きっと」
パソコンから一ミリも顔を動かさず、さらっとそんな台詞を言われても、何も心に響かないよ部長。だが、一理あるかもしれない。つまり修行させようとする教師の圧制から、逃げ回り自由を掴む戦いが、今始まる。でもなあ、そうなった場合、百鬼夜行の連中が来た時に、先生に助けて貰えないし。
そんな苦悩な俺を捨て置き、部長は今日もホラーゲームの製作に没頭中だ。今は陰陽師を題材にした、アクションありのホラーサスペンスを計画しているらしい。あまり関わってないので具体的な内容は把握していないが。
「駄目だ、駄目だ。こんなんじゃ!!」
部長が当然、大声を出し頭を抱えて、椅子から立ち上がった。
「どうしました、部長!! 顔が怖いです」
「頭の中に素材が無い。イメージしやすい背景グラフィックが無い!! 面白いコマンド入力が思いつかない!! 後姿だけで分かるキャラクターが出てこない!!」
うわぁ、何言っているのか分からねえ。
「こんなんじゃ、誰も満足してくれない。駄目だ、駄目だ、駄目だ!!」
確かに、だってあなたが満足してないもん。
「ええぃ、このままじゃ埒が開かない。そうだ!!」
部長が息を大きく吸って、元気良く叫んだ。
「そうだ、視察に行こう!! 行弓君!!」