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輪廻

 朧月の下に高校生と小学生が一人でふらふらと歩いているこの時。世界は時代劇の世界のような異質な空間。仕度を済ませて出動したのは昼の一時ってくらいなのに、霊界には夜しか存在しない。相変わらずここに住んでいる妖怪達は家の中に閉じ籠って出てこない。俺達が陰陽師であるからなのだが、百鬼夜行の知名度の低さも伺えるな。


 それとも、俺達が頭首暗殺の犯人だと知っていて、いざ戦闘になった場合に巻き込まれないように身を潜めているのだろうか。いずれにしても気分が悪い。


 「で? お兄さんの火車だけが頼りな訳ですが……、どうですか?」


 「どうですかってなぁ……」


 火車から聞いた話では、死した魂にもいろいろ種類があるらしい。一般の青、悪行を起こした地獄行きの赤、そして……悪霊の卵の黒。だが、実は魂の色はたかが三種類ではないらしい。もっと別の色をした魂が存在するらしい。それが生前に特殊な能力を持った魂だ。


 虹色に変色した物、灰色に澱んだ色、決まったパターンで変色を繰り返す魂もごく稀にあるらしい。驚くことに俺達のような陰陽師だけではなく、一般人で全く妖力なんぞに関わりを持たなかった人にもその傾向が現れる事があるらしい。


 最も体の中に妖力が無かった為に満足に発動せず、産まれた時から死んだ時まで何の活動もしないのだが。固有の特殊能力と妖力の有無は関係ないらしい。だからこそ、レベル3があんな無敵じみた力を手にした事にいわくを覚えるのだが。


 「行弓ちゃん。いくら任務とはいえ私は気乗りがしないよ……。阿部清隆の魂を取りに行くなんて」


 「やっぱりまだ天国だの地獄だのには行ってないんだな」


 返事が無いって事はその通りってことだな。火車の職権乱用は使い手である俺も気が痛むが、今はそんな事を言ってられる状況じゃない。


 「確かにまだどこにも送られてないよ。特殊な魂は輪廻をせずに倉庫に保存し長年眠らせるのさ。魂はただの無機物じゃない、人間をかたどる上で最も重要な核の部分だ。だからこそ、そんな始めから危険な物は繰り返さずに保存する。絶対に外へは出さない」


 なるほど……でもその格納庫を狙われたら……阿部清隆の魂だけではなく、全国の古今東西全ての歴史を奴に操られるという話になる。そんな危険な事態になる可能性だってあるのに、どうしてリーダーは俺達三人をこちらに選んだのか。暴れるだけなら俺でも出来たのに。


 「大丈夫、格納庫に閉まってしまえば問題ない。あそこはどんな強大な妖怪でも手におえない禁忌の場所だ。悪霊が入ろうとでもすれば、その溢れ出る霊気で全ての肉体は枯れ果てる。侵入なんかできないはずだ。だが、まだ阿部清隆の魂は格納庫に入っていない」


 つまり俺達は奴の魂を格納庫前まで見届け、そこにまんまと現れた綾文功刀を倒せばいい。


 

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