目星
火車……そんな事が出来るのかよ!!
「あの……行弓ちゃん。そんな事が私に出来る訳がないでしょう。私達の仕事は死した人間の魂を運ぶことだけどさ。勝手に持ち出したりする事が許される訳がないでしょう」
お札から火車の反応があった。確かに火車がそんな無鉄砲な要望に応えるとは思えない。そんな事はただの職権乱用としか言われないよな。つーか、もう死んでしまった魂なんか回収すること何の意味がある。
「すみません、火車が無理だって言ってます。それに魂だけを持ち出したって仕方ないでしょう」
まあ折角リーダーが考えてくれた作戦だが、却下せざるおえない。
「あのねぇ、僕が何を一番気にしていると思う? 本当に犯人の目星がついていないと思うかい? 分かっているさ、誰が殺したかなんて。そいつは悪霊の中でも『操作』の能力に特化した悪霊」
犯人が分かっている……、つまりリーダーが確信にいたるまでの決定的な何かがあるという事だ。俺達に頭首殺害の容疑を被せた奴。少なくとも、俺達の敵だという事になる。その『操作特化』とか言う奴は、俺達が奴等を討伐しようとしている事に勘付いているのかもしれない。
「その犯人がいる場所は可能性で二つしかない。まだ御門城にいるか……。それか、阿部家の『現界と霊界を繋ぐ』能力を狙って殺した後に、霊界まで追って行き魂を狙っているか」
魂を狙っている? よく意味が分からないのだが……。説明を要求する前に五百機さんが教えてくれた。
「レベル3の悪霊は他の霊力を持つ存在の全てを、僕にすることが出来る。前回の君が学校で、回避特化の悪霊に遭遇した時にされようとしたことさ。奴は御門城に乗り込み、命を奪った。だが単純に考えればオカシイだろう、レベル3の悪霊なら殺さずに媒介にすればよかっただけの話だ」
確かに、特に能力が目当てだったというのなら、なおさら殺さずにその自慢の操作する能力とやらを利用して操ればよい。俺なら殺さない。
「だが、奴はアテが外れたのさ。まあ簡単に言うと頭首様は奴等の想像を遥かに超越するほど雑魚と変貌していた訳さ。奴は狙いであったターゲットは悪い意味で効果を発揮する個体じゃなかった。ガードできると思って放った威嚇射撃が防げずに……、とかかもしれないけど」
散々な言われ様だな。死んだ人を悪く言うのはあまり感心しないな。
「そして奴は殺してしまった後、次の作戦に切り替えた。人は死んだ後に魂だけの姿になる。そしてその魂をバラバラに切断して能力だけを回収して、自分に埋め込む気だ」