血眼
お亡くなりになった……、陰陽師の現頭首が……。
「おい、待て。死因は何だ、誰が殺した!!」
「いやいや、誰が殺したか分からないから暗殺されたなんて言い方をしたんじゃないですか。心配しなくても我々が第一容疑者って世間で騒がれてますから」
駄目じゃないか!! ついに恐れていた事態が。これで百鬼夜行と他の陰陽師機関とで全面戦争だ。偉そうに全てを守ると言い切った瞬間に、平和はこれ以上にないと言えるくらいまで砕け散った。
「私のせいだな。奴の持つ式神をお札ごと奪ったからな。奴を守る最後の砦も無くなったのだろう。臣下は呆れ果て気力を失い、本人も歴代の阿部家の中でも最弱と言えるほど衰退していた、そして私が奴の弱体化にトドメを指した」
何なんだ、その言い方。まるで直接的ではないにしても俺達が悪いみたいな言い方だな。俺までちょっと心苦しくなってきたぞ。
「これで阿部家の由緒溢れる伝統にも終止符が打たれたか。まあ我々の目指す新たな時代の幕開けと思えばいいか」
少し投げやりな様子の五百機さん、別に嬉しそうな顔をしている訳ではないのだが、悲しんでいるとも言い難い。なんとも微妙な切ない顔だ。
「……えっと、他の御子息は?」
「もう一人もいないと聞きました。阿部家の衰退は留まることをしらなかったですからね。これで完全に血統は根絶やしになりました」
……マジか……。腐ってはいたが、奴は陰陽師の王とも呼ぶべき男だった。あの伝説の歴代最強とも言われた阿部清明の血筋を受け継ぐ、最高峰の陰陽師だった。そんな男が……殺されたのだ。
「別に陰陽師機関に忠義心とか無いから、祈りを捧げるような真似はしないけどさ。やっぱりどんな人間でも、人が死ぬってのは嫌だな。俺はどんな人にも死んで欲しくないかったから」
「お兄さん、そう思わない奴がいるからあの人は殺されたんです。それにしても一体誰があんな奴を……。まあ現場に行って確かめようもないですし。まあアジトがバレない事を祈るしか方法はないですね」
そう言って前回は見つかったじゃないか。俺も大概危機感という物がない奴だと自負しているが、こいつらも結構ないい加減だよな。まあ俺とは実力が違うという事なのだろうか。俺が僻んでいるだけか?
「おっと、リーダーから指令だ。今からアジトにいる全員は一階のロビーに集まれって。恐らく話すネタは今の事だろうな。今後は血眼になって私達を捜索する本部やその他の地方機関の連中からどう極秘行動を取るかを話し合うのだろう」
機関全員で今後の身の置き方について話し合うというわけか。これは修行どころの話じゃない、悉く何かに邪魔されているな、俺。