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逆風

「あの……俺も夏休みに入って、一か月ほど時間が出来たので時間を修行に当てたいな、と思いまして」


 「それで君の教育係である私に相手を修行相手をお願いしに来たと?」


 思ったよりも冷静に話を聞いてくれた。さすが百鬼夜行で一番、話が分かる人ですよ。他のメンバーにこんなこと言ったら、まず笑われるだけだと思うから。


 「リーダーは君に悪霊と戦う為の戦闘技術は求めていない。君の仕事は捕獲不能レベルの妖怪を説得して仲間にすることだ。夏休みの期間はそちらの仕事をして貰う。私だって暇じゃない、君の面倒を見てやりたいのが本音だが、そうそう都合よく時間が取れると断言できない」


 冷静だからこそこの人に稽古を見て貰うのは難しいと思っていた。何と言うか、リーダーの意見や精神をこの人ほど忠実に守っている人もいない。この人だって俺が強くなる事なんて求めていないのだ。


 しかもこの前の相良十次との戦闘で鶴見牡丹は憑依装甲を身に付けた。つまり鶴見は俺と違って一段上のステップまで行ってしまったのである。俺は相良を仕留めきれなかったという事実もある。ますます俺が戦闘兵としての価値など無くなったのだ。あの出来事が最悪のタイミングで逆風となった。


 「行弓君。君の『強くなりたい』という気持ちは、誰かを守りたいという思いから来ているのだろう。それは個人的には嬉しい限りだ。でも君の潜在能力ではその方法は容量が悪すぎる」


 潜在能力……、確かに俺は元々、陰陽師になれるギリギリのレベルの力しか持っていなく、それが原因で戦場に出向かなかったお陰で、実践経験も少ない。俺が秀でていたのは、手持ちの妖怪が異常に強かっただけだ。それも他の汚点が台無しにした。


 「君は戦場に赴いて先陣を切る事だけが仲間を守る事だと思っている。だが君が一番すべきことは何だ。一刻も早く、悪霊に対抗するための強大な妖怪を集めて、私達のサポートをすることだ。それが君のすべき事であり、私達を守ってくれることになる」


 あれ? これって説教? 俺もしかして怒られている? 

 少なくともこれって断られるパターンであるのは確かだよね。もう断られる勢いが出来上がっているんだよね。もうトドメの『だから無理』をどうして早く言ってくれないのだ? 何かただの躾られている後輩みたいな光景じゃないか。


 「あの……無理ですか?」


 「そうだね。御免なさいだけど」


 遂に断られた。一喝されて一刀両断される感じではなくて、じりじりと絞殺された気分だ。これは心が痛いぞ、涙が出そうだ。

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