裏腹
当たり前の事だったのかも知れないが、レベル3の悪霊は一体じゃないはずだ。もしレベル3の悪霊達があのグラサンマスク野郎のように何かしらの特殊能力を持っていたとしたら、想像絶すると言ってもいいだろう。
だが俺はまだ、奴等を倒すほどの実力は無い。中途半端にやれるかも分からない撃退方法だけを知っても、何が出来るのだろうか。俺は立場を分かっていなかった、臆病風に吹かれてこんな事を言っている訳ではない。
強くならなくてはならない。今すぐにでも。
「で、えっと……夏休みになったしな。修行パートに入りたい訳なのですが、どうしよう」
俺は百鬼夜行のメンバーである。だが、俺の希望とは裏腹にリーダーは俺が戦闘をする事をあまり良しと思っていない。俺は捕獲不能レベルの悪霊と上手く交渉する為の、俺の妖怪への勧誘とかを担当する事を望んでいる。はっきり言って、あの人は俺のことを戦闘兵としてカウントしていない。ただでさえ忙しい彼女が、修行の相手なんかしてくれないだろう。
そしてまた、リーダーの思考は、他のメンバーにも伝導している。早い話が、俺の仲間は誰一人として俺を戦闘能力をアテになんかしていないのだ。まだはっきりと仲間だと思われていない奴もいる。松林とは住む込んでいるアジトでちょくちょく顔を合わせるが、気に食わないという顔しかされない。
ダモンはダンスなら教えるとか変な事言っているし、追継や鶴見に教えて貰うのは癪だし。一番理想的に思えるのはやはり俺の教育係である五百機さんなのだが、どうだろうか。
「と、いうわけで彼女の部屋の前まで来た訳なのですが」
いざ、出陣という精神にならない。何と言うか辺に緊張する。もし、門前払いだったらどうしよう。自分がすべき事を考えろとか言われたら、俺は上司に刃向えるだけの正当な理由を持ち合わせてはいないぞ。
だが、虎穴入らずば虎児を得ずだ。とにかくやる前から諦めるような話じゃない。何といわれようとも、お願いするだけしてみよう。
というわけで、突入しようとドアをノックしてみた俺だったのだが。……失敗した。返事が返ってくる前にドアが勢いよく前に開き、ドアノブが腹に直撃した。
「痛いです、五百機さん」
「すまん、日頃から松林の馬鹿が来る時にこういう対処法を取っていて。奴は最近はノックすらしてこないから、幻覚を使って部屋を攪乱しようと考えていたところに丁度ノックが掛かって……やってしまった」
取り敢えず中に入れて貰ったのはいいのだが、しばらく痛みで立ち上がれそうにない。蹲った状態の俺を見て、五百機さんは溜息まじりで見つめていた。
「それで、用件はなに?」