同士
「素直に教えてくれませんかね? 私の『緊急回避信号』は、例え同じレベル3の悪霊であろうとも効果は変わりません。悪意を持って私を攻撃する限り、その厄災は必ず目の当たりにできます。自慢ではありませんが、生き残るという点においてこの世のあらゆる面で最強の能力ですから」
「この学校に居座る気か」
「そんな悠長な時間はありませんよ。もういいです、このままでは埒が明かない。私はこう決断しました。もっと然るべき準備を持ってして、また皆様の元に会いに行きます。今日のところは諦めてあげましょう。時間がありませんから」
さっきから時間が無いと何度も口にしているが、奴に何の時間制限があるのだろうか。レベル3の悪霊、分からない事ばかりだ。
「じゃあ今度は教えて下さいね。私の最愛の人の場所を」
「早く帰れ、不法侵入者!!」
「逃がしていいんですか!!」
「いま何を頑張ったって、奴は倒せない。下手をして奴を逆上させてしまったら、どれほどの被害が出るか分からないだろう。ここはこちらも泣き寝入りするきかない。大丈夫だ、然るべきタイミングで僕が殺す」
リーダーも奴を逃がすという点には賛同してくれているみたいだ。
「じゃあごきげんよう。同士達」
それだけを言い残すと、また似合っていないグラサンとマスクを被り、意外にも徒歩で校門の方向へ歩いて行った。二世代でも霧になるくらいは出来たのだから、わざわざあんな恰好で歩かなくても。
「はぁ、びっくりしたぁ。いきなり悪霊が学校に潜り込んでいるんだからな」
理事長は先ほど、第三世代の悪霊の情報を知りたかったら自分で取りに行けと言っていたが、それどころの話じゃないかもしれない。俺がまだ奴等と肩を並べて戦えるほどの陰陽師じゃない。
俺は百鬼夜行の陰陽師としてリーダーや他の皆がレベル3の悪霊の情報を教えてくれない事へ憤りを感じていた。だが、皆の判断は間違っていなかった。教えてくれない皆が悪いんじゃなくて、俺がまだ守られている立場の人間だからだ。
単純に俺が弱いからいけないのだ、俺が下手に首を突っ込むと危ないから俺を守るために黙っておいてくれたのだ。教えて欲しいなら自分で掴みにいくしかない、それは無謀な事をするという意味ではなく、しっかり物が言えるだけの立場になれということだったのか。
本当に怖い思いをして、ようやくそんな事に気が付いた俺であった。
それにしても…………奴の言い残した……『同士』って何だ?
12話、完