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彷徨

「もしかして私と戦闘するつもりですか? 止めて下さいよ。私は他の連中と違って戦う事には特化していないんです。もう本当に私って争い事とか嫌いなんです。私は彼女を救出する為にこの場に足を運んだ次第で、ここにいる誰とも、勿論あなたとも戦う気なんてないんです。本当に私は無害な悪霊なんです」


 悪霊が無害を主張するなんて、もう悪霊の存在意義を否定している気がする。悪霊は関係の無い人間を巻き込んでこそだろう。この世界に人間に害を与えない悪霊がどこにいる。


 「戦わないっていっても、お前はこちらが確保している悪霊を一匹逃がすつもりだろう。それじゃあ今回の闘いでは何もないにしても、後々に響いてくるじゃないか」


 たとえばあのダルそうな悪霊が、かなりの日数閉じ込めていた恨みとして相良を攻撃したりするかもしれない。通常の悪霊一匹を倒すのにこっちがどれほどの人員をいていると思っている。まして第三世代の悪霊など何人で倒せるか見当もつかない。それを、はいそうですかと逃がす馬鹿はいない。


 ……本音は、後で色んな人に怒られそうだから…………なんてことはない。


 「大丈夫ですよ、あの人も人間には全くの無害だから。本当に平和主義者なんですよ、私達は。我々の目的は人類に仇なす敵になることではなく、完璧な人間になることだから。人間に戻る事だからね」


 死んで肉体が無くなった後の魂だけの姿になった者が、前世に強い怨念を抱いているせいで天国にも地獄にも行けずに、現界を彷徨ったあげくそれが妖力を持って実体化した姿、それが悪霊だ。


 だが、感情を持っている訳ではなく、ただ骸人形のように目的は人間を襲うことのみであった。まあ世代を挟んで姿を変えたという事があったが、やることは何にも変わらなかった。


 レベル3になって感情を手に入れた悪霊は、『考える力』を手に入れた。それが故に、働かないニート精神のように、自分達の生きる目的を失った逸脱した発想に辿り着いてしまった訳か。丁度、うちの烏天狗のように。案外、生き物ってのは機械のように生きていた方が、その物本来の動きをするのかもな。


 「それでも駄目だ。駄目なもんは駄目なんだ」


 「ぅぅぅ。分かりました。では私がいかに陰陽師の皆様に無害かを証明すれば宜しいのですね」


 バトルパートに入るかとドキドキして、内心は震えている俺な訳だが。どうやら俺がここまで挑発しても戦うという発想にはならないらしい。というか、悪霊が無害の証明って何をする気だよ。


 「私を好きなように攻撃して下さい」


 はぁ? なんだこいつは、新手のマゾヒストなのか? 人間になりたいって言っておきながら、何を参考にしているんだって、何を悠長に突っ込んでいるんだよ、俺は!! 相手は紛れも無く悪霊だぞ!!


 「どういう意味ですか?」


 「あなたと私が戦う事がいかに無意味か説明します」 

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