掌握
この間に相良は取り敢えず下を向いて考える素振りだけはしていた。
「分からねーけどさぁ。あれなんじゃねーの。レベル3って言ったって所詮は今までの悪霊の延長線でしかない。いままでの野郎に心理掌握っていう能力が重なったってだけで、何も変わらないんじゃねーの」
……俺とは違う見方だな。俺は今までの奴等とは違う奴だと思っている。だって今までの悪霊に人間らしさなんて欠片も無いからな。
まあ、否定出来る何かを持っている訳ではないので黙っておくのだが。それでは理事長先生に模範解答を聞こうではないか。
「はい、ではでは。うん…………二人とも不正解です」
不正解か、別に自分の声に自信があった訳ではないが、こうもはっきりと言われると、なかなか傷つく物だな。何かちょっと怒られているような口調だったのが気になるし。
「まず、相良君の『今までと変わらない』ってのは違う。むしろ今までとは全然違うという表現の方が正しい。奴等の能力は心理掌握なんて言う生温い物じゃない。もっと残酷で狡猾な物だ。まるで精神というものを弄ぶ為に使っている連中だから。まあ詳しくは後で説明するよ」
ふーん、俺にはよく分からなかったのだが、今までとは全く違うと考えておいた方が良いということは心に刻んだ。
「それと行弓君の『まるで人間』ってのも大間違いだ。そう思っている時点で奴の手の平で踊っているも同然だ。奴らは確かに精神という物を持っているが、人間のように貧弱で脆弱じゃない。よくフィクションの世界で精神が恐ろしいだの、強いだの言われるキャラがいるだろ。現実にいるわけがないだろ、って思う輩。まあ現実世界では奴等だって事だ」
極限の状況でも耐えられる、そして極限の状況へ追い込める。悪霊の生き様を真っ当した形である、相手の精神崩壊を姿だけではなく言葉も組み込んでいく。心理掌握というよりは、精神破壊。手の平で覆うのではなく、手の平で弄んだあとに握り潰す感じか。
「奴等の強さはそれだけじゃない。奴らの姿は『この世界に存在しない何か』。そして奴らの特性は我々のような『陰陽師』を模している」
この世に存在しない何か。そして、陰陽師。俺は頭が混乱し訳が分からなくなった。ここにきて相良が前のめりになり叫ぶ。
「陰陽師ってどういうことだよ。姿は陰陽師らしくなかったから、姿は分かるとして、特性が陰陽師って意味が分からない。正反対の存在である陰陽師に奴らがなれる訳がないだろ。そもそも奴等と俺達のどこが同じだっていうんだ」