相談
そもそもである。俺は今からはっきりさせておこうと思うことがある。
俺は今、どこの誰と戦っているのか。
始めは百鬼夜行に入りたくなくて、勧誘に来た連中を倒す為に修行をしていた。だがそれは連中が全国の陰陽師を襲っているという事実があったからだ。俺は奴らを退治するつもりだった。
それからは百鬼夜行に入った。本当の目的が別にあったからだ。百鬼夜行の本当の目的は第三世代型の悪霊を倒す事だった。その行程の為に松林という奴が勝手に独断行動をしていただけに過ぎなかった。真に倒すべきは奴なのか。
その後は、本部の御門城に奇襲したり、他の機関の悪霊に飲み込まれた式神を解放したりして……、学校に行くことになった。そこで戦ったのは相良という男。奴は俺と同じく一般の陰陽師を襲う事に反対している奴だったのだが、意気投合などすることもなく、俺と鶴見によって倒してしまった。
どうもしっくりこないのが、俺は何のために戦っているのかという事だ。そして戦うべき相手とは誰なのかという事だ。何というか、それがはっきりしないからモチベーションが上がらないのだ。修行する気が起こらないのだ。
という訳で、様々な人に相談しているのだが、はっきりした答えが導き出せない。リーダーははぐらかすばっかりだ、この前はレベル3の悪霊について詳しい説明をくれるって言っていたのにそれも延期になっている。五百機五十鈴さんも俺の教育係っていう役職のくせに、リーダーが話さないなら私も口を割らない、なんて言ってくる。追継やダモンも同様だ。鶴見はどうやら俺と同じくらいの知識しかないみたいだし。松林に相談とかは論外である。
仕方ない、俺に残っている選択肢は少ないが、まだあると言えばある。この前に知り合った相良十次だ。彼はレベル3の悪霊をたった一人で捉えたという逸話がある。それはそれは悪霊について詳しい人物なのではないか。
だが、奴の性格は結構ひん曲がっている。教えてと言って素直に教えてくれるとも思えない。しかも今は彼はかなり落ち込んでいる、鶴見に敗北するは、百鬼夜行のスカウトはパーになるは、あの試合の後に禁術を使用した事への理事長からお怒りを喰らうは。踏んだり蹴ったりだからだ。
あの自信過剰なスタンスは嫌いだが、戦う理由としては共感できる点が多い奴だった。友好関係を築きたかったが、ちょっと難しいかもな。もしかしたら理事長に相談という手もあるかもしれない。
だが、今の俺に一番レベル3の悪霊について説明してくれそうな人は間違いなくあの人だ。そう相良の畳返で囚われた時に遭遇した死体。レベル3の悪霊さん。彼女自身に説明を仰げばいいのではないか。
という理由で俺は、相良の元へもう一度会いに行くことにした。