表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
240/462

煙幕

リーダーの言いたいことがだいたい分かってきた。鶴見があの中でまだ戦っている。こんなに時間が経っても理事長が判定を出さない理由が何となく分かった。


 「さーて、もうそろそろかな」


 相良は捉えた巨大提灯を放っておいて欠伸なんかしてやがる。理事長は何やら気難しい顔をして鶴見を見ている。まるでリーダーと同じような顔をしていて。


 「おい、しんぱ……」


 ようやく相良が鶴見の違和感に気付いた。別に変だとは思わない、むしろ気付くのが遅すぎるくらいに感じる。相良は慌てた顔つきで不安そうに提灯を見た、先ほどの俺のように自爆を警戒しているのだろうか、それとも提灯を畳んでくるのを警戒しているのだろうか。鎖でまた鶴見を捕獲できるのかを考えてるとか。


 でも一歩遅かった、相良が対処法を決める前に鶴見が動きを開始した。


 リーダーの予想通り、提灯お化けは爆風を巻き起こして消えた。一瞬は自爆したのかと思ったが、そうではないのがすぐに分かる。爆風を上手く煙幕代わりに利用して奴の最も長所である目を封じるつもりだ。


 煙のせいで鎖も見えなくなった、しかし擦れ合う音の響きから相良が咄嗟にどんな行動を起こしたのかは分かる。覆い被せていた鎖を収縮してまだ中にいる鶴見を再度捕獲するつもりだ。全方位から幾多の鎖で縛っていたので、ある一部分からの脱出という作戦はおそらく不可能。だったら、相良が鎖を縮める前に鶴見が提灯お化けが占めていた空間から脱出できるかどうかだ。


 その結末は……。


 鶴見は突進の構えをする前には奴が鎖で捕獲する事を想定していた。だから掴まってもすぐには行動を起こさなかった。十分に鎖のスピードから逃げ切る自信が無かったからだ。通常の身体能力ではまず不可能だったからだろう。


 だから時間をかけて自分の身体能力を上げた。体に妖力を溜めて発散するのではなく、妖力を全身に巡らせたのだ。だから鎖の巻き付きを……容易に躱せた。


 始めから相良がこうなる事を警戒していたら勝負は変わっていたかもしれない。考える時間はいくらでもあった。こんな結末を産んでしまったのは他でもない。純粋なる驕り昂ぶりだ。


 「お前に助けて貰わなくても結構だ!!」


 その決め台詞と共に、妖力で身体能力の挙がっている鶴見の拳が容赦無く相良の顔面を捉えた。相良は殴られる前に何か言おうとしていたが、完全に間に合わなかった。無様に上空へ飛来した後、背中から地面に着地する。


 まるで勝負の終わりを告げるかのように、鶴見を捉えようとして空振りした鎖達がお互いに絡みつく金属音が響き渡った。しばらくして鎖も目玉達も霧になるように消滅する。相良の妖力が反応しなくなった証拠だ。つまり奴は完全に伸びてしまった事になる。


 「勝者、鶴見牡丹」


 ここでようやく、理事長が声を発した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ