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黒鎖

奴の最後の切り札が発動した、袖の目玉は飾りではなかったらしい。そもそも毎回の俺達の判断が間違っていた。目目連が複数いると断定して考えていた事だ。それは大きな間違いで、結局は対峙している目目連は一匹しかこの場に存在していなかったのである。


 目目連の一番の特徴は、目が複数で一体であることだ。蜘蛛の目玉が八つであり、人間が目玉が二つであるのと変わらないくらい、目目連の目玉の数が無限であるのは至極真っ当な事なのだ。


 そこに奴の仕掛けた罠のギミックが存在する。


 「鬼神スキル『帯脆おびただ』」


 奴の最大の強さはその全方位から目視できる観察能力だ。奴は目目連を利用して、あらゆる場面を視認することが可能だ。例えば授業の風景を現場にいなくても、後ろの黒板に張り付けておくことで容易に先生の書く黒板が見える。


 戦闘での生かし方は、情報収取だ。咄嗟に思いつく物が少ないが、利き腕がどちらかとか、踏み込むのがどちらの足が先かとか。相手から知り得る情報が他の陰陽師と比べて半端じゃない。今回は何もない場所での戦闘だったのでいまいちの性能だったが、障害物のあるステージでは無類の強さを発揮するであろう。


 何よりも違和感の少なさが重要だ。学校の黒板のように本人がバレテもいいと思いでもしない限りは目玉状態の目目連を意識するのはなかなか困難である。どうしても障子姿のイメージが強いのが原因かもしれない。この戦闘でも始めに確認したはずの袖の目玉を、俺は今まで完全に忘れていた。


 空間転移だけが切り札じゃない、観察能力と、ステルス能力。戦場において場合によってはパワーやスピードよりも重視される。奴はそれを誰よりも持っている。


 鶴見の中に入った提灯が急に空中で動きを止めた。それは鬼神スキル『宵氷』のように一定時間の動きを止めるような能力ではない、これは黒鎖で相手を封じ込める捕獲技なのだ。提灯は一瞬にしてどこからともなく現れた鎖に、見る影もないまでに何重にもグルグル巻きにされ、挙句の果てに地面へと叩き落とされた。おそらく中にいた鶴見にもダメージが……。


 発射元を知るべく鎖を目で辿っていく。目が良い方で助かったあんな小粒では見えない人もいるだろう、なんと天井にびっしりと目目連と思える目玉がびっしりと埋まっていたのだ。その中の角度のマッチした何十体が鎖を発射したのだ。


 そして地面にも、流石にそんなに数はいないが、五体くらい目玉が浮き出ていた。勿論、そこから目玉が発射されている。奴の目目連の障子はこいつらを隠す囮だったのだ。そして最後に奴の腕から鎖が一本伸びている。


 「提灯の中に隠れて視界を断ち、相手の妖力のみで感知して撃墜する。だから足元を掬われるんだ、突進なんてするもんじゃないぜ。まあ俺もこの仕込みを発動するのには時間が掛かったからな、その代わりにかなり強固な鎖が張れたぜ」


 相良がまた自信満々の余裕の笑みを浮かべた。


 「銃だの剣だの格闘だのビームだの、そんな戦闘を高校生がするかよ。幼稚園生のお遊戯会じゃないんだ、陰陽師の模擬戦は。フィールドを制する者は勝利を制する。いかに実践で悪霊を捉えられるかが重要なんだぜ」

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