隕石
鬼神装甲が具体的にどれほどの強さを発揮するのは分からない、たった一度の戦闘でしか目の当たりにしなかった俺が語るのは、烏滸がましいという奴だろう。
だが、少なくとも松林はあの憑依装甲を重宝していた。技の威力、範囲、性能、全てにおいて格段のレベルアップが見受けられた。リーダーの口ぶりからもそれなりに凄い事なのではないか。
それにしても妖怪との合体か……。今までの陰陽師にはありえないスタンスだな。これがレベル3に悪霊を倒す為の秘策なのだろうか。だとすれば納得がいく、妖怪と友好関係を結ぼうとする方針の現実的な所以が。そしてここにいるギャラリーの連中が一番拝みたかった物がこれであった事も。これからの戦闘の切り札の確認が出来るのだから。
「憑依装甲か……、そんな物をどこで……」
「牡丹燈篭が私を裏切った時に発動した。牡丹燈篭は私のことを必要不可欠な存在だと認めてくれたの。別々の場所で戦って、お互いが分からなくなって。常に傍にいて心を通わせる事にした。牡丹燈篭は強力な妖怪、だからこそ私の事をどこか物足りなく感じていた。でも行弓君に敗北して分かった。私達が敗北した理由はお互いがお互いをカバー出来なかった事」
鶴見が握っている提灯お化けの大きさがまた膨れ始めた。伸縮自在のその提灯は先ほど本来の用途では絶対にない鈍器として利用された。今回はそのように使用するのだろうか。
相良の方は先ほどのような覚束ない中途半端なガードではなく、本気で守りに徹しているようだ。あの憑依装甲をよほど警戒しているのか、目目連を複数出して自分の周りを固めている。防御結界でも張るつもりだろうか。それとも空間転移で回避するつもりだろうか。いずれであっても、先ほどのような倒れ込む失態を起こすつもりはないように思える。
「終るね、次の一撃で」
この二人の共通する弱点は攻撃に入るまでの準備が長すぎるのだ。あまりに遅いとこの俺が感じる。まあ命の取り合いではなくあくまで模擬戦なので真っ向から戦っているとみるべきか。
ようやく鶴見の方は準備を終えたようだ、自分の体の三倍もある提灯お化けの中に入り込み、一人と二体を囲む炎が混ざり合って合成された。まさしく三位一体である。
「あの形は……突進か!!」
と俺が言い終わる前に、鶴見は相良を目掛けて動き出していた。その塊は業火を纏った隕石のように見える。これならある程度の妖力玉なら何のアクションも無しに打ち消すことが出来る。まさに攻撃は最大の防御だ。
さて、どうするつもりだ。相良の奴は。