確証
その言葉に何様のつもりだとかは思わなかった。まあ随分と自信家であることは、今までのやり取りで分かっていたが、まさか出会ってすぐの女の子に対し『救ってやる』の一言は凄い、いろんな意味で。これは鶴見さん的にもポイントが高いんじゃないかな?
「御望み通り殺してやる」
駄目だ、お気に召さなかったらしい。鶴見の奴は本気で相良を殺すつもりじゃないのか?
ちょっと気になったのだが、相良は本当に精神異常者なのかもしれない。奴が自分で言ったことなので何の確証もないのだが、奴が本当に元から陰陽師の家系であったのならば、他の弱い陰陽師への見下し根性が芽生える前に、妖怪を奴隷だと思う感情が根強いはずだ。
でもあいつは捕獲不能レベル妖怪であるらしい目目連を従えている。始めから家系での式神だったとは考えにくい。さらに言うと、奴は陰陽師どうしが争うのは嫌っているが、妖怪と仲良くすることに関してはどうも思ってない。
何なんだ、あいつは。第三世代型の悪霊を一人で取り押さえるだけの強さがありながら、勝ち負けには拘ろうとしない。常軌を逸した平和主義者ってイメージだ。あいつが百鬼夜行に入ったらどうなってしまうのだろうか。松林とは一悶着ありそうな予感がする。……と、その前にこの勝負に勝たなくてはならない。
「でも相良に戦意は無いなら、おのずと鶴見の勝ちは確定じゃ」
「そうとも言い切れないね。僕は相良君が鶴見を自分の配下に残そうと奮闘してくると思うな。今は彼の説得フェイズだから大人しく攻撃を受けているかもしれないが、ちゃんとガードもしているだろ。彼は思いの外負ける気なんてさらさらないよ。もっと言うと、ちゃんと鶴見はそこまで分かっているよ、君とは違ってね」
おっと……怒られた? 今ちょっと俺、リーダーに怒られた?
「まあ僕はあんな言葉じゃ鶴見ちゃんは落とせないと思うな。さっきも言っただろう、鶴見ちゃんを救えるのは鶴見ちゃんだけだ」
でも、問題はあるのではないか。純粋に鶴見が相良に勝てるかどうか、という。相良は先ほどの攻撃は一発も当たらなかったのはワザとにせよ、鶴見の全力放火を計算してガードした。全力で防いだのではなく、鶴見に自分の思いを伝える為にある程度のダメージを残して、敗北にならないように気絶を避けたのである。
つまり先ほどのやり取りで、鶴見は相良の手の平で踊っていたに過ぎないのである。まだ相良はそこまで余裕なのだ。俺は鶴見が相良に劣っているようにしか見えない。勝って欲しいとは思っているが、何故か鶴見の敗北の未来が見える。