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心意気

終わったのか、もう勝負はついたのか?


 おいおい、随分と呆気なかったな。結局、あいつは一度も鶴見に反撃できてないし。鶴見の圧勝じゃないか。確かあいつレベル3の悪霊を封印したほどの実力者で、あの噂の理事長から一目置かれている存在じゃなかったのか? 凄いのは俺に仕掛けた閉じ込める奥義だけなのか?


 「いや、まだ決着はついてないよ。意味は分からないけど、今の攻撃はワザと当たったんだね。演技力が無いから実力者ならすぐに分かるよ。あの審判だって全然、反応してないだろ。……うわぁ、今ちょっとこっち見た……、嫌だなぁ」


 リーダーは随分と酷い言いようだな、隣にいる理事長の娘のである追継が可哀想だ。……顔をピクリとも動かしていないけども。父親の事なんてどうでもいいのかな? いくら上司とはいえ、他人から自分の父親が馬鹿にされたら、嫌な気分になると思う。表に出していないだけなのか?


 「ほら、立ち上がった」


 リーダーの言葉に注意を試合の方に戻す、確かに相良は苦しそうにしながらも立ち上がった。目線はまだ上空にいる鶴見のほうにある。


 「おい、そこの女。もうこれで満足か」


 また、負け惜しみ……。じゃない、あの顔は、間違いなく鶴見に対して挑発の意味合いで言っている訳ではない。その発した言葉は、まるでなだめるかのような優しい口調だった。反応の意外さに鶴見も驚いている。


 「どういう意味だ……」

 

 「お前は復讐が目的で戦っているんだろ。旧世代の陰陽師が嫌いで、憎くて、許せないんだろ。罪に対する罰を与えるつもりなんだろ。だったら俺は恰好の獲物だな。家は由緒正しい陰陽師、努力せずに手に入った実績、それ故の見下し根性。俺はお前が嫌っている陰陽師の破損そのものじゃないか」


 奴は鶴見の魂の悲鳴を一言一句、逃さず聞いていた。奴はよく分からない平和主義を語っていたが、どうやら口だけではなかったようだ。何故、今までの陰陽師を襲うのか。奴はそれを真意に問いたかったのかもしれない。この学校の奴らは『余計な産物の削除』だった、それは相良は知っていただろう。だが百鬼夜行の心意気は知らなかった。


 他人の痛みを分かる人間なんて地球上にそうはいない。神に祈りを捧げようが、長い苦しい修行を経験しようが、どれだけ友達の数が多かろうが、出来ない奴には絶対に出来ない事である。奴は分かりたかったのだ、百鬼夜行の……鶴見の痛みを。だから避けなかった。


 「満足じゃないよな、お前は長い年月の苦しみを味わい続けたんだ。このくらいな訳がない。だから今、俺にぶつけろよ。お前の復讐をここで終わらせるんだ。だからお願いだから俺以外の人間を攻撃するな。いつでもお前の的になってやる。お前の苦しみは俺が引き受けよう」


 俺と戦わなかった理由がようやく分かった。奴はこんな模擬戦など、どうでもよかったのだ。旧陰陽師を襲おうと思っていない俺になど興味すら無かったのだ。俺は他の百鬼夜行のメンバーを誘き寄せる餌だったのだ。


 「鶴見、お前を救ってやる」

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