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執着

鶴見の闘いへの執着は、復讐にある。


 自分の人生の歯車を狂わせた陰陽師という風習そのものを毛嫌いしている。常識を超えた上下関係、何もかもを犠牲にして任務を優先する心構え、遺伝で得られる越えられない才能の差、腐りきった奴隷根性。


 何もかも理不尽な光景だが、連中には美しい機関の調和にしか見えていない。そのあやまちは一千年という時間の流れが違和感を掻き消した。そしておそらくこの時代の人間以外にも多くの人が犠牲になったのだろう。


 「いやぁ、ちゃんと反省しているねぇ。鶴見ちゃん」


 どこが!! とリーダーの不意な爆弾発言に驚きを隠せなかった。鶴見が精神的に弱い、どこか思い過ぎてしまうところがありパニックになりやすい、だから心にブレーキを持っていない。陰陽師で差別された過去が影響している、嫌な意味で職業病だ。


 「反省してないだろ!! もう精神崩壊の寸前じゃないか!! どうしてあいつを代理として戦わせるんだよ!!」


 「……部屋を真っ暗にして、部屋の隅に体操座りしてうずくまって、悲しそうに目を瞑っておくことが反省かい? 失敗を反省する奴の態度なのかい? 君にとって反省って何かな? 少なくとも彼女は『次からはしないように反省します』じゃ済まないレベルの失態を犯したんだ。じゃあどうすればいい?」


 どうすればって…………分からない。さっぱり分からない。


 「泣いて、わめいて、叫んで、唇を噛み締めて、精神を崩壊させて。元の自分を失うしかないだろう。彼女の世界は不屈に塗り固められた世界だった。そんな世界を自分から打ち消すには、吐き出すしかないんだ。自然消滅なんかないんだよ。消えない痛みをぬぐうには、自分を失うには、全てを吐き出すしかないんだ。鶴見牡丹を救えるのは、鶴見牡丹だけさ」


 鶴見が追撃を開始した、提灯から炎が巻き上がる。妖力を練り込んだ火の粉が無数に飛び交っている、その火の粉が次から次に分裂をし続ける。さっきまで鶴見の悲鳴がかった持論を嫌そうな顔をして黙って聞いていた相良だが、ようやくここで行動を開始する。


 「……やりにくいなぁ」


 そんな言葉とは裏腹に、御札から次々に目目連を召喚する。やはり俺の火車と同じで複数に式神がいる。目目連の能力は空間転移。その能力は複数の障子を整えてから完成する。


 お互いに遠距離から砲撃戦をするつもりだ。あの攻撃準備からお互いのバトルスタイルが読める。鶴見の場合は軌道を描くような予測不能の弾丸を、複数回の時間差に分けて叩き込む作戦。相良は目目連の空間転移を応用し、障子をバラバラの位置に配置して逃げ場を奪いつつ、なおかつ見えない死角からの不意打ちを狙っている。


 お互いが式神の特性を生かした上手い戦法だと思う。でもそんな作戦はこの馬鹿な俺でも思いつく事だ。問題はあそこからどうやって相手を出し抜くかだ。


 リーダーがボソッと言った。

 

 「鶴見牡丹を舐めるなよ、今の彼女の中に余計な雑念の無い。これが本当の鶴見牡丹、帰ってきた番長の晴れ舞台だ」

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