仲直り
鶴見が理事長の目の前にやってきた。始めて会った時の陽気な感じは一切感じられない。俺は前回の闘いで鶴見と直接戦った訳ではない、だから鶴見がどんな風に戦うのは知らない。牡丹燈篭の能力が反則的に強いのしか知らないが、鶴見の直接的に戦うと、どのような闘い方をするのだろうか。
「始めて下さい」
まだ何も相良と会話をしていないというのに、いきなり試合を始めるつもりだ。あの変なリアクションをして、完全に浮いていた理事長さえもこれにはポカンとしている。
「おいおい、俺に何もないのかよ。俺としては折角の噂の番長との初対面なんだから、もっと会話したかったんだがな。そうだ、お前もこの戦いに負けたら百鬼夜行を脱退して………おい、人の話を聞けよ。女」
「………時間の無駄だ。とっとと始めるよ」
鶴見は文字通りに相良を全く相手にしていない、鶴見は真っ直ぐに相良の正面に立っている。正面を向いているから前方を眺めている訳だが、見方によっては睨み着けているようにみえる、だが俺には相良を見ているようには見えない。まるでもっと別の物を睨んでいるように思えた。そんなに毛嫌いしているのか、過去の自分が。
「じゃあえっと……試合開始で」
そんな力の無い理事長の合図と共に、試合が開始した。俺と違って二人ともその場から動こうとしない。やはり自分に動かなくても攻撃を防げる自信がある人はああいう感じなのか。
「つーか、全く動かないのかよ」
鶴見は相変わらず異質な目で相良の方を眺めるだけ。相良の方も出方を伺っているようにも見えるが、全くその場から動かないのは同じだ。
「さ~て。戦おうか、御嬢さん。目目連!!」
「……牡丹燈篭、提灯お化け」
お互いに式神を並べる。相良の背中に一体の目目連が出現した、既に障子の面々には全ての面には目玉が敷き詰められている。鶴見もほぼ同時に二体の式神を出した、着物を着た骸骨とあのマスコット提灯だ。牡丹燈篭は空に浮いて鶴見の傍にいる、提灯お化けは取っ手の部分を鶴見が握っている。
「鶴見と牡丹燈篭は俺との戦いで仲たがいしていましたが……鶴見はちゃんと牡丹燈篭と仲直りしたんですかね」
気にかかっていたことをリーダーに尋ねてみた、返事は来ずにただ首を振るだけだった。
「さぁね。情けない話だが、僕には見当がつかないよ。一度の敗北で信頼関係が崩壊してしまうなんて……と思うかもしれないが、実際に牡丹燈篭が敗北に恐怖しているのは間違いないんじゃないのかな。またの敗北を恐れ、前よりも早い段階で戦線離脱する可能性も充分にある」