番長
だからその番長って誰なんだ、最近ちょいちょい耳にするがどこの誰だ。
「とか言っている間に来たみたいだよ。ほら……」
会場の入り口に一人の女性が立っていた、それは俺の知っている人だった。髪が薄い桃色で、小柄な体格、目は大きく顔は整っている。以前に俺の出身地を爆破しようとした女。
「鶴見牡丹!!」
その姿は男性の恰好である『ぼたおモード』ではなく、初めて教室で出会った時と同じ女性の姿だ。制服はこの学校の物になっている。もちろん女子の制服だ。帰ってきたのだ、いつも通りの鶴見牡丹が。
ギャラリーが途端に血相を変えた、まるで恐怖に怯えているような感じが漂う。場の空気が一変したと言っても過言ではない。鶴見がゆっくりと観客席の階段を降りてこちらに近づいてくる。
「お待たせいたしました」
それだけ言い首だけでリーダーと合図を交わすと、鶴見は真っ直ぐ会場の中央へ向かって歩き出した。まるですべての状況が分かっているように。
「おい、何で鶴見がこの会場にいるんだよ。まさかお前が俺の代理で戦うのか。いつの間にか男装から解放しているし。つーか、番長ってお前だったのか。お前のどこが番長なんだよ、おい!! どうなってんだ!!」
また訳が分からない状況へ。正直に言うと鶴見が男装しているのはこちらにしても目に毒だったので、解放された事はまあいいや。これ以上に蕁麻疹が出来て、苦しむの姿を見るのはこちらとしても気分が悪いしな。本当に反省しているようだったからこの機会に許してやるとして。
俺の代理が鶴見ってのは……まあ、打倒なのかもしれない。この任務の担当は鶴見を含まれていたからな。戦闘面でも鶴見はあの飛鳥を凌ぐほど強い、牡丹燈篭との関係が安定して、戦闘に対する温度差が無くなり、牡丹燈篭と鶴見の利害が一致しているのかどうかにかかっている。
問題はあいつが番長だったってところだ。今のこの非常時に何を気にしているんだと思うかもしれないが、気になるったら気になる。確かに俺のクラスの生徒から番長が百鬼夜行から引き抜かれたと言っていた、答えに辿り着く為のヒントならいくらでも貰っていたのだ。それでも俺は分からなかった、全く鶴見にそんなイメージが無かったからだ。あいつはこの学校でどんな生徒だったというのだ。
「行弓君、まあ私が番長ってこの学校で呼ばれているのは……私は公認してないから。勝手に付けられたあだ名だから。……まあ、そんな驚いた顔しないで。これでも反省しているんだよ、今までの人生の全てを」
どうしたあいつ、男装して蕁麻疹だらけになって頭までおかしくなったのか、奴はこの数日間で何を振り返ってきたというのだ。
「おい、番長。お目に掛かれて光栄だぜ。とでも言っておこうか」
「誰だ、お前」
鶴見の視線が相良の余裕ぶった勝ち誇る顔と重なった。