禁術
「どうしてだ、どうして俺が疲れ切っている事を知っている」
……三人が揃って気まずそうな顔をした。まるで俺が取り返しのつかない事を仕出かしたような雰囲気だ。
「お兄さんは確かにあの技を浴びた後に、すぐにその場に倒れてしまいました。ですが、おそらく気絶などと呼べる状態ではなかったことは予想が出来ます。お兄さんは倒れている間中にずっと、声を発していたからです」
声を発する……今までずっと。それじゃあ……。
「俺はその……なんと言ってました?」
悪霊と会話していることも知っているのだろうか。俺があの障子だらけの空間での言葉を聞いているなら、俺が悪霊と会話をしたことも間違いなく気付くはずだ。
「お兄さんは知ってしまったんですね。第三世代型の悪霊の存在について。感情のある人間と変わりない、陰陽師をモチーフとした悪霊に」
……ばれてる。俺が悪霊を脱走させる危険性がありながら自分の勝負の事を優先した事がリーダーにバレテイル……。陰陽師失格……。
「す、すいませんでした!!」
俺は馬鹿じゃないのか、俺は特異な空間に閉じ込められている身だからといって、俺は相良と戦っている最中なのだから、ギャラリーに見られていないと断定するのは軽率だった。俺ってやつは……。
ジャンピング土下座なる神技を人生で初めてやってみた。中途半端な演技まがいじゃ本気が伝わらないと思ったので、それはもう全力で。まず崩れた体制を必死にリーダーの方に傾けて、それと同時に体のバネを使って空中へと浮きあがった。そしてまず両手を一番初めにコンクリートに叩きつけ、折り曲げた状態の足を膝からコンクリートにぶつける。最後に頭を地面に擦り付ければジャンピング土下座の完成だ。
「痛てぇっ!!」
「お兄さんは何をしているんですか?」
そりゃあ全身全霊を込めた謝罪に決まっている。このまま裏切り者扱いをされて、リーダーから怒られるに決まっている。
頭の悪い奴ほど目上の人から怒られる時に言い訳をするのだ。しでかした以上は無傷で解放される可能性なんぞ極めて低い。それを火に油を注ぐ真似はアホのすることだ。ヤバいときは言い訳なんぞせずに即効で謝る。なんか怒りが収まってきたなぁと思ってから弁解や言い訳を始める。頭の良い怒られ方の基本だ。
「別に怒ってないよ。もしそんな奴が現れたら僕が麒麟で瞬殺しているから。むしろ誘導してきて欲しかったんだけどね、大三世代型の対処は早期発見、即刻排除が基本だから。封印なんて不安な事をしなきゃいいのに」
リーダーは俺の事を怒っていないようだ、喜ぶべきか……それとも。
「それよりもあの相良って人、一体何者でしょうか……」
ダモンのその一言で全員が対戦フィールドの中央で理事長と言い争いをしている相良の姿を見た。