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 「あの~、がんばっている人達に向かって、こんなこと言いたくないけどもさあ。無理だと思うよ」


 だって古くからの伝統に逆らうなんてレベルの話じゃない。俺の場合は一人でうじうじしていただけで、同じ思想を持った人々と集まろうとか、まして新機関を立ち上げようとか、一切考えていなかった。そもそも非常に情けない話だが、俺は才能が無く、まるっきり戦闘の仕事をしていない。だがもし俺が生まれつき才能があって、一般的くらいには強く、室内での雑業専門係でなかったならば、運命は変わっていたかもしれない。俺もまた、式神は道具だという発想に至ったのかもしれない。


 「そうですね、しかし我々には切り札があります。昔、貴方が持っていた、たった一つだけ強み。それと同じものがね」

  

 「あれは俺が強かったんじゃない。偶然が生んだ奇跡だ」

 

 「そう貴方は奇跡を起こした、戦闘では完全に戦力外の身だったあなたが」

 強みなんて表現になるほどカッコいい代物ではない。ただ手持ちの式神が強かった。それだけだった。簡単に言うと、世の中にはいくら陰陽師でも元のスペックが高すぎて、捕獲し式神化させるのが困難な妖怪がいる。そういう奴は過去に、自分を捕獲しにきた陰陽師達とのいざこざで、陰陽師どころか人間までもが大っ嫌いという心構えの連中ばっかりだ。だから陰陽師もそんな強い妖怪は無視している。さわらぬ妖怪に祟りは無いみたいな関係だ。


 だが俺は違った。偶然遭遇した大妖怪に対し、気軽に話掛け、怒られ、泣かされ、土下座させられ、気が付けば仲良くなっていた。だから俺は持っている式神のレベルだけは最強だった。


 勘違いして欲しくないのは、だからといって、俺の無能さが緩和されたわけではない。むしろ折角の式神の強さを俺が台無しにした。ろくに妖力も取らず、ろくに命令もせず、ただ一緒に笑っていた。


 役に立たない俺を機関がすぐには捨てなかったのは、まさしくこれが原因である。俺の利用価値が曖昧だったのだ。あるいは強い妖怪を縛っているという肩書が欲しかっただけかもしれない。


 陰陽師を止めてすぐは、追継の手に渡ったあいつが大人しく従っているのか、実は不安だった。本当を言うと、今の火車との関係のように陰陽師を止めた後でも、一緒に生活したかったのだが、上層部が許さなかった。肩書を失わない為に。


 「百鬼夜行のリーダーは、誰よりもあなたを尊敬し、あなたを歓迎しようと考えています。都合が着かず、私が参りましたが、最後の最後まで自分が行くとおっしゃっていました。私達と手を組んで頂けるなら、貴方の過去の式神さんの契約を戻します。そして、昨日の事件に関わる全員の記憶を消去いたしましょう」


 後半は無条件でやってくれないのか、罪悪感とかないのかよ。

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