障壁
障壁……つまりこいつの造形は楯というよりも、壁に似ている。
これである程度の範囲をカバーできる広さを持ち、何より火車の変形という俺が先生との修行でほぼ完璧と言えるレベルまで馴れている、今回はそれを応用しているだけなので技を構えるスピードが速く、何より失敗が無い。
勿論、楯のモードにも出来るのだが、今回は拡散弾だったので多少妖力を消費しても障壁の方を選択した。
「……お前って烏天狗が式神じゃないのか。いや……この感じ、妖力だけは供給しているって感じだな。原理は理解したぜ、お前の闘い方がなぁ」
原理を理解されたということは弱点もバレたとみるべきだろう。俺のこの戦法には致命的な弱点がある。簡単に言うと、スタミナだ。
鶴見は牡丹燈篭から妖力を供給する場合に提灯お化けを中間に挟んで貯蔵器として応用し、見事に持続して高精度の技を繰り出していた。つまり俺にはそんな都合良い物が存在しない。俺は烏天狗から貰った妖力を全く体の中に溜めておけないのである。
だからもし鬼神スキル蓮柱などで、お互いに剣を持ち出し鍔迫り合いになった場合に、お札に戻って真っ二つになるのは俺の方という訳だ。折角出したこの壁も、すぐに解除して三体の火車に戻ってしまった。
曲芸と呼ばれても仕方がない、たった一回見せただけで俺の切り札は効力をほとんど失ったのだから。持続力の無さ、スタミナの限界の速さ、昔から俺の致命的な弱点だった。
だが、目目連の習性がいまだ分からない以上は嫌でも長期戦になる。短期決戦で飛び込まないのはカウンターが怖いのだ、奴が持っているであろう秘策が。
「どうした、『次はこっちの番だ!!』 とか言って殴りかからないのか?」
「これでも慎重派なんでね。迂闊に飛び込むほど勇者体質じゃねーよ」
本当は飛び掛かりたい限りだ、奴か奴の式神を拘束して体にさえ触れれば、妖力吸収をして減るであろう妖力を補給し、大技で一気に勝負を決められる。俺の必勝パターンに持ち込む場合には、奴に出来るだけ手の内を明かして貰わねばならないのだ。
「隙を付こうって訳か、随分と男らしくない奴だな。まあいいや、じゃあ遠慮なくまだ俺のターンってことで、攻撃をさせて貰うぜ」
お手柔らかにお願いします……なんて、言えないわ。
「目目連、こっちも出し惜しみは無しだ。俺達も変形って物を見せつけてやろうぜ」
「主様、あの技はこの前の先生方との模擬戦で派手に展開しすぎて、後で理事長から結構マジに説教されたばかりじゃ……」
「安心しろ、許可は得ていない」
「それでもするの!!」
なんだ、相良の奴。何をするつもりだ。そりゃあ戦い始めたばかりだから、まだいくらでも攻撃の手段は隠し持っているだろうけど、あの陰陽師と式神のやり取りは何なんだ。