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理事長

この陰陽師の世界に知らない方が良い事なんてあるのか。知識は経験だからある方が人生を渡り歩く上で優位になるってのは安直か。


 「奴が来るって……、誰が来るんだよ」


 そう言えば俺が確認した限りで、この場に来ていていないと思われるのは……噂の理事長くらいだ。確かに奴はまだこの会場に到着してはいない。


 「もしかしてお前が言っているのって……理事長?」


 「詮索するな、知らない方が良いと言っているだろう。ワシはお前のいう何とか長などという役柄は知らん。とにかくお前にとって……いや、百鬼夜行にとっても、かなりマズイ男が来るぞ」


 ……まあ、烏天狗が理事長が一体何者なのか理解している訳がなかったな。さて、烏天狗の折角の助言には悪いが、今の俺の立場からして逃走はありえない。そもそも今回はその理事長と戦うのではなく、相良と戦うのである。ここまで大舞台なのだから表立った妨害や邪魔も出来ないだろう。俺の仲間も観戦しているのだから。


 俺が逃げ出す前に話題の男が姿を現した。陰陽師には似合わない一般的なスーツを着ている。俺が想像していたよりも若いな、そんなに歳を取っていないように見える。


 「あいつだ!! 間違いない」


 「じゃああの男が……この学校の理事長!!」


 マイクを取り出すと、まるで当たり前のように進行役を始めやがった。その目には野望とか邪心があるようには見えない。


 「それでは緑画高校、エキシビジョンマッチを開催いたしまーーーーす!!」


 一人だけ明らかにテンションが違う、温度差がありすぎる。この場の全員が置いて行かれた気分だ。遠足前の小学生の如く煌めいた目で俺と相良を目視した。


 「何だよ、あいつ」


 俺の不意な発言にある程度距離がある位置に立っている相良が反応した。


 「あれがこの学校の理事長だよ」


 やはり……あいつなのか。思ったより真面目な印象が沸かないな。


 「皆、待たせたね。実況はこの僕!! 渡島搭吾がおこないます!! では対戦者の紹介から」


 渡島搭吾……知らない名前だ。さっき烏天狗は百鬼夜行にとってマズイと言ったが、奴はどんな人相なのだろうか。少なくとも、追継の父親ってことなのだから百鬼夜行に害は無いと思いたかったのだが。


 「百戦錬磨の最強陰陽師!! 蹴散らした陰陽師は数知れず。天上天下唯我独尊、立ちはだかる奴は皆まとめてぶっ潰す!! 相良十次さがらじゅうじ!!」


 スゲェ紹介文だな、相良は大声を出してツッコミは入れないものの、目をピクピクさせて怒りをあらわにしている。そんな相良を気にせず今度は俺の紹介をする。


 「百鬼夜行の新星、あらゆる属性を使いこなし、捕獲不能レベルの妖怪をわずか小学生の時点で手にした期待の転校生。あの番長を倒したその腕が本物なのか……今日このリングで明らかになります。橇引行弓!!」


 まず奴は嘘つきだと言っておく、俺はあらゆる属性を使いこなせた試しなどないし、烏天狗は俺の言う事なんぞ聞いた試しはなかったし、誰からも戦闘面では期待されていない。つーか、番長って誰のことだ。


 そして、こいつ。どうして俺みたいな人間を知っている?

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