抵抗
どこのバトル漫画の展開だ。戦って勝ったら仲間に入れって、今のご時世に許されるのかよ。ん? ちょっと待て。
「何で俺なんだよ、お前が戦えばいいだろ」
「小学生に高校生の相手を任せるつもりですか。丁度お兄さんのクラスの人なんでしょう。仲良くなるための喧嘩だと思って、頑張って下さいよ」
嫌だ、俺はこんな無意味な戦いに身を投じるのは御免だ。あの相良がこんな理不尽な条件にのってくれるとは思えないし、自分が無理矢理入隊したからか、俺には入りたくないと思っている奴を引き入れるのに抵抗がある。
「……ちょっと相棒と話し合わせて貰ってもいいか?」
「えぇ、構いませんよ」
瞬時に拒否するかと思えば、椅子から降りて目目連のいる後ろの黒板に静かに歩いて行った。チラッと俺を見るとすぐに目線を逸らす、朝の警戒心が何故かその時だけは感じられなかった。まさか本当に先ほどの追継の挑発によって、闘争心が芽生えてしまったのではないだろうか。
「おい、どうするんだよ。追継」
「どうするって、そりゃ死ぬ気で勝って下さい。お兄さんが勝ってあの男を百鬼夜行に引き入ればこれで万事解決です。今回のミッションがクリアになります」
無茶苦茶だ、確かに俺はここ最近の努力と幸運で陰陽師としてある程度の力は着いたと思う、しかし俺の弱さが根本的に治った訳ではない、この間は松林に対し、無様に敗北したしな。そりゃあ俺だって任務が早く終わることに越したことはないと思うが、こんな条件付きの闘いでわざわざ俺が戦うには、リスクが重すぎる。
「いいぜ、その条件で。ただし俺が勝った時にも何か条件をつけさせて貰う」
うわぁ、さっきまで平和を論じてた奴が喧嘩を買っちゃったよ。
「橇引行弓。もしこの戦いで俺が勝ったら、お前は俺の傘下に付け。勿論、百鬼夜行を脱退してな」
…………は?
「実は俺、お前についてある程度知っているんだよ。というか俺は興味なかったんだけど、内の学校の理事長が大変お前をお気に召していてな。随分と馬鹿らしいじゃねーか、雑用係さん」
俺のことを知っている……理事長がお気に召している……。
確か理事長って追継の父親だったよな……、こいつは理事長と何か繋がりがあるって事なのか。
「俺は理事長とコンタクトを取っているが、正直に言って俺はあいつの敵だ。これ以上の全国の陰陽師を襲わせるなんて馬鹿みたいな行為を止めさせようと抗議に行ってからの付き合いだからな。ただの平和主義者と思われているのが気に食わない。お前達を吊し上げて見せしめにして、この学校の奴等、先生、理事長、そして事の発端の百鬼夜行に教えてやる。自分たちのやっている事の恐ろしさをな」
……むしろ俺はこいつのやろうとしていることを支援したいくらいある。俺だってそんな強襲事件を食い止めたいと思っている人間だからだ。松林の馬鹿のせいで……また俺が矢面に立って戦わなきゃいけない破目に……、この前の御門城の時と責められ方のパターンが同じじゃないか。
「お兄さん、お気持ちは察しますが……。ここは話し合いではなく、殴り合いで解決して下さい。宜しくお願いします」
「あぁ、俺も機関の人間だからな。上官の命令には従うよ。ただ負けても責任は取れないぜ」
「構いません、お兄さんは勝ちますから」