謝罪
まさか……目目連の使い手というのは、こいつなのか。
「……なんで泣いているんだ?」
「主様、お助け下さい。この方々は主様に御用があったらしく……」
痛々しく充血している目は、必死に痛みを堪えながら声を出した。だが聞き取れはするものの、随分と苦しそうに呻き声のように言葉を発する、目だけの姿なんて全身が急所みたいな物だからな。
「何してるんだ、お前」
「だって主様がずっと動かないでここでじっとしていろって」
「お前、泣いているじゃん」
「それは激痛が……」
どうやらこの二人でペアだったみたいだ、話の流れからしてどうやら相良は目目連に対し動かずじっとしていることを要求していたようだ、それを忠実に守ったが故にこんな結末に陥ったらしい。
とにかく気まずいのは言うまでも無い。もはや、パートナーを傷つけられた事に対して、相良が俺に怒ってくれた方が、まだ後味が良かったかもしれない。相良は興味なさそうに、ただ茫然と泣いている目目連を眺めている。
誰にやられた!! みたいな素直な反応をして欲しかった。このままじゃ俺の目目連を傷つけた事に対する罪悪感が拭えない。
「おい、目目連。なんというか……いきなり殴って悪かったな」
「ぅぅぅ……」
「申し訳ありませんでした」
空気を読んでくれたのか、俺と並んで謝罪してくれた。まあいつものサラッとした口調だったので気持ちが籠っていると感じてくれたかどうかは、はなはだ疑問だが。
「で? お前達は何で俺の式神を殴ったんだ?」
このタイミングで突っかかってくるのかよ。
「目目連に使い手を聞き出そうと思っていたからです。私達が百鬼夜行だと言えば、話が通じてくれますか?」
「……あんたたちが」
相良は一瞬だけ驚いたような顔をした、まあスグに冷静さを取り戻したのだが。そりゃこんな狐耳フード小学生と何の強大な妖力も感じ取れない雑魚同然の転校生のコンビを見て、百鬼夜行の人間だと察してはくれないだろうな、逆にあの一瞬で体制を立て直した方が凄いよ。
「って事は、前の番長のように俺を誘拐しに来たって訳か。前回はリーダー自身がここに来たって聞いていたが、今回はお前達みたいなのだけってところを見ると、俺はそこまでいうほど期待されていないのかな」
……ん? 番長? 誰のことだ?
「今の百鬼夜行はあの時のように時間がないのです。本格的な闘いの寸前まで追い詰められているんです。従ってリーダーも忙しいのですよ、だからこそあなたのような選ばれた実力者が欲しいのです」
この不良モドキが選ばれた実力者だぁ? 冗談だろ。
「……褒めてくれているようだが、あんまり嬉しくないな。それ以前に、転校生。お前には言ったよな、俺は陰陽師じゃないんだ」