参謀
「さーて、面倒な相手なんだが」
だが、このまま手掛かりなしで手ぶらのままアジトに帰るのは、とっても癪だ。ここはどんな手段を使ってでも、目目連の使い手を炙り出してやる。
と、いう訳で。
「レモン汁でもぶっかけるか!!」
奴は反応こそないものの、目はパッチリ開いている。レモンの果汁の持つビタミンCを得と味わうがいいさ、眼球でな。
「お兄さん、なんかツッコミみたなポジションが出来あがってますけど、正直お兄さんも時々は発想がズレてますよね」
そんなことはない、俺は常識人だ。お前らみたいな奇人変人集団と一緒にされてたまるか。
「そもそもレモンなんて都合の良いものを、お兄さんは持っているんですか?」
「今から近くのホームセンターで買ってくるんだよ」
「明日、挑戦して下さい。お兄さんは百鬼夜行の作戦参謀なんですから、もうちょっと頭の良さそうな事を言って下さいよ。これは遊びじゃないんですよ」
……そんな事を言われても……。
「じゃあ直接触れてみればいいんじゃねーか」
「分かりました」
いや、待ってよ!! これも冗談だよ!!
って口に出す前に追継は手を動かした、それも拳を固めて思いっきり振り切ったのである、勝手な見立てだがおそらく全力だっただろう。
「「「うわぁ!!」」」
俺達の一連の流れを見ていたのか、その場にいた全員が絶句する。目を真っ白にして、一瞬だけ悲鳴のような声をあげて誰も声を発しなくなった。
俺もクラスの皆と同じリアクションをしていたのは言うまでもない。しかし、別にそんなつもりはなかったものの、追継に指示をしたのは俺のように見えているだろうから、これからの学校生活に支障を来さないか不安でならない。
で、肝心な目目連の反応はと言いますと……。
「何も反応が無い……だと……」
馬鹿なっ、追継の右ストレートが完璧に決まったはず……。
「いえ、お兄さん。反応はありましたよ。近寄ってみて下さい」
何だよっ、別に痛々しくて近寄りたくないよ……なにっ!!
「目目連が……泣いている!!」
「どうやら意識が無いのではなく、ただ無視していただけのようですね。私が拳を当てる寸前に、この目玉は目を閉じました。これは目を守る為の反射の行為、つまりこの目玉は意識のある生物であるということです。こうやって涙を流すのも痛みを感じている証拠です」
……、意識がない可能性なんて考えていたのか……。
「本体は別にあって、分身や分裂の類ではないかと疑ってかかっただけですよ。もしそれらなら、静止したままか、分散して消えるなどの現象が起こるはずです。さて、捕獲不能レベルの妖怪を随分と飼い慣らしているようですね。今回のターゲットさん」