蕁麻疹
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それからの時間は特に何が起きることもなかった。クラスメイトは普通に優しい人ばっかりで、……俺の陰陽師としてのプロフィールが洗いざらいバレた。どうも他の機関からやってきた陰陽師がどんな奴か気になるらしく、小学生からの俺の経歴をしつこく詮索してきやがった。
一つ分かったのが、ここは別の陰陽師機関なんて所ではなく、どうやら百鬼夜行の支柱傘下にあるようだ。全体的な場の緩みもそうだが、それ以前に百鬼夜行の基本概念である妖怪との仲を大事にするという事を率先して行っているからだ。
驚いた光景がいくつもある、休み時間に女子が妖怪の毛並をブラシらしきもので整えたり、一緒にお弁当を食べたり、仕舞いには校庭や屋上などのある程度空間のある場所で、先生を審判につけて模擬戦までおこなっている始末である。その対戦からでも、陰陽師側がただ命令するのではなく、よく連携を考えてあり対戦中の話し合いもよくみられた。従来の陰陽師では絶対にありえない行為ばかりが炸裂する。
一通り授業が終わり、隣の小学校に通っている追継と合流した。どうやら俺以外の二人は百も承知というより、本当は転校生は俺のみで、鶴見が以前に通っていた学校がそもそもこの緑画高校で、普通に鬼神スキルで移転を揉み消した以上はただの帰還だったらしく、そもそも追継に関してはただ普通に登校していただけだったらしい。
学校に行く前に説明しろって話だが、それを問い正した所でおよそ結果は目に見えている。差し詰め言わなかった理由は、反応が楽しみで言わなかったとかだろう、いちいち聞き出すまでもない。
「で、この学校は一体どうやって完成した訳ですか」
「それは内のリーダーに聞いて下さい。私のような平戦闘員には分からないです」
追継にしては随分とそっけない態度だ、久しぶりに学校に行って何か嫌な事でもあったのだろうか。
「そういえば鶴見は? 三人でこの場所に待ち合わせだったよな」
待ち合わせ場所はこの緑画高校の校門前である。何故かというと、これからアジトに機関するのではなく、目目連の使い手を探す手掛かりを探しに行くのである。何日かかるか分かったもんじゃないから、取り敢えず初日から頑張ってみようという手筈だったのだが。
「来ないなぁ」
「あー、鶴見さんの案件ですけど……、元クラスメートに男装姿を本気で気持ち悪がられた精神的ショックにより、全身蕁麻疹で今日は早退しました。と、いう訳で私とお兄さんだけでこれから調査をします」
うん、あいつ学校に行く前から本気で死ぬ一歩手前みたいな表情だったからな。まあこの学校が百鬼夜行傘下である以上は、絶対命令ではあるだろうけど、ここまでくると流石に可哀想だな。そろそろ解放してあげてもいいと思う。ドクターストップって奴だ。