外様
使い手が不明……、俺はあいつと契約した陰陽師に用がある為に捜索の必要がありそうだな。この教室内にいるのか、奴がこの教室に住み込んでいるならば可能性は高い。だが、教室の連中に明かしてないところをみると、自分が目目連の陰陽師であることを知られたくないと思っているのかも。
「えっと、橇引行弓です。皆さんと同じ陰陽師です、笠松町ということろから来ました。何かと分からないことが多いと思います、教えてくれるとありがたいです」
まあ、現状の全てに納得がいった訳ではないが、これ以上に無駄に時間を消費して先生を困らせる訳にもいかないので、小難しい事を考えるのは後にしよう。
と思って、ただ頭の中に思いつく事をだらだらと言っていると、教室の後ろのドアが開いた。クラスの奴らが後ろを振り向く。
「遅刻しました」
なんかきやがった。いかにも柄が悪そうな男が。黒髪で久々に見たオールバック、目つきはこれでもかってほど悪く、全身から不機嫌オーラが漂っている。どこの世界にもああいう態度の大きい奴はいる、いや寧ろ俺の人生にはあんなタイプに人間が多数いた。嫌だなぁ、ああいう感じが悪い奴。
「相良君、遅刻は厳禁だと言っているでしょ」
「こんな時間になっても黒板に一文字も書いてない教師が何を言っているんだよ。一時間目の先生が教室の前で立ち往生してたぜ」
口答え。相良とかいったか、さぞや正しい事を言ってやったみたいな雰囲気を醸し出しているが、お前の遅刻の弁解には一切なってないからな。
「じゃあ、えっとこれで」
あの不良の言葉を真に受けたのか、走って教室の外にいなくなった。捨て台詞でもいいから、奴に何か言っておかないのかとは思ったが、まあ言葉なんかが通じる相手なんかじゃないのだろう。この学校にいるということは奴も陰陽師なのだろうか、陰陽師はこれでもかって言うほど規則だの制約だの面倒な事は厳しい物なのだが。
「おい、なんだ。そこのお前」
俺が睨まれた……、あまりのインパクトに注視してしまった。
「いや、陰陽師として遅刻はどうかなって」
「俺は陰陽師じゃない」
……知るかっ!! この学校に来て間もない外様野郎の俺に、どうやってお前が陰陽師かどうかを判断づけろと言うのだ。かっこつけるのもいい加減にしろ。
「学生としてもアウトだろ。高校生ってのは大人になる為の準備期間なんだから。守るべき規則は守れよ」
「大人になる為の準備期間なら、予行練習による失敗も想定の範囲内だろ。お前の持論に乗っ取り、次からは努力して間に合うように家を出るよ」
そういうと、指定の席に向いやがった。