外出
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「目目連?」
「はい、今回のターゲットとなる妖怪は目目連と呼ばれる名前の妖怪です。古びた障子の一枚一枚に目が付いているだけの可愛らしい妖怪です」
凄まじく怖いだろ、それ。目が拡散するって、ホラーな展開の定番じゃないですか。あらゆる方向から睨まれるんだ、その威圧感たるや想像絶するぜ。
「まあ正確には目目連を持つ陰陽師をスカウトに行く訳だけどね」
「鶴見、お前は怖くないのか」
俺は見たくもないくらい、イメージが最悪な妖怪なのだが。
「この男装に比べれば、この世に怖い物なんて一つも無いですよ」
…………それも……そうか。
「何が怖い能力かって言いますとですね。この妖怪は他の障子と合体出来る訳ですよ。始めは目玉一つで獲物を脅かし、追い詰めたら障子一杯に目玉を広げてトドメを指す。物から出来た妖怪ならではの、他の日常用品も利用するっていう付喪神タイプの特性を持ちながら、目玉が特徴であることや追い掛ける特性から鬼の種類の派生との噂される、まだ陰陽師界でも解析が不十分の大変珍しい妖怪なのです」
ますます会いたくないです、はい。海坊主や鶴見の提灯お化けなど、妖怪の中には可愛らしい外見を持つ妖怪も多数存在すれば……、見た目が最悪で過去の逸話も災厄な妖怪だって星の数ほどいる訳なのです。
という訳で、我々百鬼夜行の小隊である俺達三人は、この新しい勉強の場となる学校へ向かうことになった。場所はアジトからそう遠くない場所であった。ミッションもさながら俺達はここで一般的な高校生としての生活を営むらしい。俺は転校生となる訳である。
実家から俺の日常で使っていた品が大量に送られてきた。機関が確実に関わっているだろうが、よく俺の身内にバレないようにコーティングしてやがった。
俺は別にこの待機期間に外出禁止の指令を下されていた訳ではない。だが、あんまり外に出なかった、恥ずかしい限りだが落ち込んでいたのが理由だ。愉快に外を出回って遊び回る気分ではなかった。
あんだけ時間があったのならば、この近くの学校の場所くらい把握する為に下見に行くべきだった。馬鹿みたいに引き籠っていたなんて、恥ずかしいにもほどがある、自分が情けない。
「さて、これから俺ってどうなるのかな」
学校に行くって言われても、俺の地元とは学習状況は多かれ少なかれ存在する、また勉強に遅れていかれそうだ。ってもうすぐ6月も終わるから……夏休み……。転校する日が中途半端すぎるよ、これじゃあクラスに馴染めないまま、またアジトで一人ボッチ……。
また頭を抱えながらの闘いになりそうだ。