学校
復活です
世紀末陰陽師対戦、なんちゃって。
どうも、最弱の汚名を被ってはや七年、特に何もしない陰陽師、橇引行弓と申します。少しの間、陰陽師から見限られて戦線から離脱し、ただの平凡な高校一年生だった俺ですが、最近陰陽師として再復活を遂げました。
所属している機関名は『百鬼夜行』。妖怪と友好な関係を築きつつ陰陽師活動することを目標としている、まだ本部から正式には認められていない。当面の議題は捕獲不能レベルの妖怪を捕獲することにある、どの機関にも負けない絶大的な力を手に入れる為だろうか。いや、これから起こる大惨事に備えてのことである、具体的にそれが何かはよく知らないのだが。
何故本部から、正式に認めて貰えていないのかというと、まず基本理念が受け入れて貰えないからである。本来の陰陽師は妖怪と主従関係をつくるのだ。だから俺達の考えは、陰陽師に反する行為であり、理解し合うことはしばらくは不可能だろう。
だが、そんな理由は些細な事。もっと明確な理由を述べると……俺達が自由奔放かつ、大胆不敵でありながら、暴虐無人な迷惑な連中だからだ。他の機関の妖怪を解放する為に、強いては捕獲不能レベルの妖怪との交渉の出汁にする為に、通りすがりの陰陽師を病院送りにする。
ついこの間には、ついに本丸たる全陰陽師機関の中心核である御門城にまで乗り込んで、散々喧嘩を売ったあげく、陰陽師業界のトップであり総帥様であられるお方『阿部清隆』様の御札、つまり式神さえも強奪した。
これらの行為を暴挙と言わず何と言う。
俺だってその場の空気で、機関の為に作業を助長した場面があった。だが、例の御門城襲来事件から一週間経ったこの時になって、俺は冷静に自分達が犯してきたリスクの高い数々の行いに恐怖していた。
俺は陰陽師としての、戦闘能力は極めて低い。落ち毀れだ。
いざ全ての機関の陰陽師との全面戦争になった場合に、たった七人しかいない我々は無事に生き残れるのだろうか。……いや、勝負にすらならない未来しか見えない。
そんな未来に訪れるかもしれない、こんな身も蓋もない世紀末陰陽師対戦に自分が不利な立場で深く関わっている事に、改めて絶望した。
ここは百鬼夜行のアジト、俺の個室。一日の中で利用することがないので殆ど家具は置かず、ただ寝る為の部屋として利用している。通常業務などが無い俺はこの1週間もの間、恐怖を噛み締めていた。
「何か学校に行きたいな」
別に学校なんて場所、俺は好きじゃない。授業は退屈だし、テストは精神的なストレスだし、時間的に縛られるし。だが夏休みなどの長期休暇でもないのにこうもズル休みをしていると、罪悪感という物は芽生えるものだ。俺は今、学校の中で恵まれない子供達を救う為の奉仕活動をしていることになっている。
「あーあ、何をやっているんだろう。俺って奴は」
ベットの上で体操座りしながらぼーっとしていた。時々、衝動的に壁に枕をぶつけてみる。すぐさま回収しにいって、また同じポーズに戻る。
「烏天狗は話し相手になってくれないし。火車と話をしたら説教になるから嫌だし。修行とか柄じゃねーし。勉強する教材も無いし、やる気も無いし」
単刀直入に言うと……暇なのだ。
するとだ、俺の部屋のドアが不意に開いた。中に入って来たのは、鶴見牡丹と振払追継である。振払追継は変化の妖力を使うスペシャリストで、妖狐を式神に持つ陰陽師だ、2代目であり1代目の孫らしい。鶴見牡丹は俺と同い年の陰陽師で、とある任務の際の不始末から、罰として男装の刑に処されている。だから今でも男の恰好をしている。
「どうした、久しぶりに指令かよ」
「はい、お兄さん。今回は私達3人で向かうことになります」
何やら二人とも嬉しそうだ、顔がにやけているように感じる。
「どうした? お前達」
ベットから這い出た俺は、二人の傍によると、追継からチラシのような色の着いた紙を手渡された。何だこれ? 校舎の絵が描かれているぞ。
「今から私達は学校に行きます」