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その後がどうなったかを語る。


 あれだけ暴走の限りを尽くした私の娘は、人間化と同時に消えて無くなった。それと同時に飲み込まれていた陰陽師や、一般人の方も、何事も無かったと言わんばかりに平然と戻って来た。破壊された建物も完全に元通りに復活していた。ここは私にもどういう理屈なのか、未だに分からない。張本人が消えてしまったので、確かめようがない。


 消えて無くなったというのは表現が悪いかもしれない、きっと私の中に帰ったのだろう。きっと私が生きている限り、あの子は誕生する。ただ単に存在しない何かだったから、なんて理由ではなく、安心して未来に会えるということだろう。そうでなければ、逃げずに人間になってくれた理由にならない。


 現にあの事件の一年後、音無晴菜は誕生した。この子と私にとっては、奇跡の対面ではなく、一年前から分かり切っていた必然だと言える。


 私はあの子を人間に戻した後に、私と渡島さんは笠松町陰陽師事務所を抜けた。麒麟に記憶消去を手伝って貰い、無断で何も言わず。それからは家族三人で幸せとは言えないまでも、娘には不自由の無い生活をさせているつもりだ。


 娘は成長していくごとに、昔の私のような姿になった。ちょうど今が、あの時の事件と同じくらいの容姿だろうか。性格は似ても似つかない、あの超絶マザコンだったスタイルはどこの棚に消えたのだろうか、昔の私のように無口で冷静な可愛げの無い子供になった。本当にあの子なのだろうかと、若干疑うくらいだ。まあこれはこれで……なんて思う次第である。


 私の母である音無晴江の話をしておく。母は私が去った二年後に怪我を完治させ、職場に復帰した。記憶を消去する際に、振払追継は怪我の為に自宅で療養中というありのままの状態を残して。母もそれで納得してくれた。そして二年後に母は橇引行弓に出会うことになる。娘である振払追継と山にハイキングに行った思い出を完全に忘れて。


 私達家族には目標がある、第三世代型に対抗すべく、捕獲不能レベルの妖怪を集めたり、妖怪に対し奴隷根性を持ち合わせていない、未来のスタイルに合わせた、優秀な陰陽師をスカウトすること。


 これからの時代に必要なのは、能力でも、筋力でも、妖力でもない。

 本当の絆で結ばれた本物の信頼関係なのだから。


 一千年の時を経て積み上げてきた不正解の歴史の殻を、誰かが破らなくてはならない。悪霊が運命の進化を遂げたなら、陰陽師も対抗して何かしらの進化をしなくてはならない。私には荷が重いと感じている、今でも不安で押し潰されそうだ。だが、私には家族がいる、心から支え合える仲間がいる。


 私は百鬼夜行のリーダーとして、世界を変える。


 音無晴香を名乗らず、振払追継も名乗らない。振払追継は私の母が一代目で、私の娘が二代目だ。私はカウントされる必要はない。


 私はまだ生きている。時代の波に消えた、『空白の振払追継』として。

番外編、完!!

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