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「師匠は悪霊化しました、ただでさえ孤立していた師匠を庇おうとする人間はいませんでした。育てた弟子でさえも、自分達が追い詰めた悪霊が自分達の師匠だということも気付かなかったそうです。そのまま師匠は自殺しました。…………で、師匠が死んだことにより、心の中に住んでいた悪霊も消滅したのは良いんですが、一つ問題がありました。師匠は自殺したあと、人間である自分はなくなり、悪霊として健在なまま復活したんです」


 …………何だと、それじゃあ折角の命を捨ててまで行った行動は無駄ではないにしろ、また新たな悪霊を生み出す手立てになっているではないか。


 「だから自殺なんて意味が無いんですよ、まあ死にたくなる気持ちは分かるんですけどね。でして、残念な事にその師匠の馴れの果てである悪霊は、師匠が最後に俺宛に残したビデオの中に潜んでいました。第三世代型の悪霊について把握したと同時に、俺自身も悪霊の餌食になったんです」


 確かそのビデオとやらには、渡島さんの師匠様の自殺映像の記録だったはずだ。まさか、悪霊が陰陽師側に詳しい事実を悟らせない為に、そんな細工をしてくるなんて。


 「俺は昔の性格のせいで、本部の仲間から孤立していました。丁度、師匠と同じ境遇です。俺はすぐに悪霊から『仕事への不満』という俺の怨念を吸収されだし、収集が着かなくなりました。一定時間と共に俺は半悪霊化し、誰にも頼れる人が周りにいなくなり、こんな逃げ回る状況に追い込まれました。前回はもう少し、時間の猶予があったんですが、やっぱり状況により差があるみたいですね」


 前回、まるで今回の悪霊化が二回目かのような台詞だな。


 「ですが、この笠松陰陽師機関に来た時は、悪霊の姿ではなかったじゃないですか。どうやって悪霊化を解除したんですか?」


 「こいつです」


 その手にはお札があった。その数は五枚、色が全て違い、赤、青、白、黒、そして黄色になっている。


 「俺の式神で『麒麟』っていいます。残りの四体の名前は、『聳弧しょうこ』『炎駒えんく』『索冥さくめい』『角端かくたん』といいます。烏天狗などとは比較にならない、応龍や鳳凰に並ぶ神聖と祭られた妖怪です」


 …………もうどんなことが起こっても驚かないくらいの自信があったのだが、これはびっくりだ。渡島さんが優秀なのは理解出来るが、いくらなんでもその妖怪は高級すぎるだろう。


 「勿論、本部にいた時に契約していた訳ではありません。悪霊化していた時に、俺の中の悪霊を浄化してくれたんです。まあ、完全にではありませんでしたが。ある程度、生活に支障が無い程度には。しかし、恐らく俺の心の中の悪霊は完全に消えた訳ではなく、発作のように再発したんです」


 まあ、いろいろまだ疑問に思うことは存在するが、一安心と言えるかな。渡島さんが、悪霊化を解除する方法を握っているならば、機関の陰陽師から逃げ切れさえすれば、渡島さんが一回目にして貰ったように、麒麟に浄化して貰えるのだから。


 「じゃあ、渡島さん。逃げ切りましょう。完全にではなくても、皆さんに見える程度に回復すれば、事情を説明できます」


 だが、そうはいかなかった。今まで走り回っていた道を振り返ると、いつの間にか追手がいなくなっている、一緒に動いていた妖怪諸共にだ。いなくなっているのは、陰陽師だけではなく、一般人もだ。今まで過ぎ去る中で、擦れ違ってきた一般の方も全員、いなくなっている。


 「諦めたのでしょうか?」


 「違いますよ、晴香さん。あいつの仕業に決まっているじゃないですか」


 そうだ、奴の仕業だった。奴が胃袋に飲み込んだのだ。


 「お母さんのピンチに頼れる娘、登場!!」


 何一つ悪びれる素振りもなく、電柱の陰から颯爽と私の娘は登場した。

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