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素直

「どうやら本当に私達は悪霊になったみたいですね。一般人の方には私達が全く認識できていない」


 「そりゃ、半分は悪霊化していますから。陰陽師には悪霊に見えて、一般人には見えないんですよ。さらには俺達は悪霊としても中途半端ですから、『見える』ようにもならないんです」


 ならばそこは都合が良かったか。人払いの必要もなく一般人に悪霊の姿を確認させずに済む。だが、…………初めて、自分が人から見えてないという感覚を体験した。さしずめ透明人間にでもなっている気分だ。


 「渡島さん、走りながらで恐縮なのですが、教えてはくれませんか。どうして渡島さんまでも悪霊になっているのかを」


 追ってきているのは、陰陽師だけではない、妖怪達もだ。多種多様の目にしたことのある妖怪が、ふらふら宙をを浮きながら、我々を追跡してくる。攻撃してはこない、恐らく先ほどの複数いる場合の条件に加え、ここには一般人がいるから巻き込めない為という理由もあるだろう、まあ私達が人間を襲えば話は変わってくるのだろうが、まだ様子を見ているのだろうか。追跡の仕事だけはきっちり行ない、私達を視界から逃がそうとしない。


 「俺は本部にいた頃から、性格がキツイ人間でした。自他共に厳しく接し、甘えや容赦を認めず、誰よりも組織としての効率を重視する人間でした。師匠からも重宝されていましたが、内心は可愛くない教え子だったと思います。反抗も反論もせず、ただ与えられたミッションをこなすだけ。壁にぶつかって悩んだり、人一倍の努力が実った成功などもない。現代の教育論からすれば、素直な子供という存在は、能力の習得が一番早く聞き分けの良い子のように評価されます。しかし、お兄さんの持論からして、そんな人間は伸び視路がないんですよ」


 自分が悪霊を心に住まわせていたことに対する説明をしてくれることを期待したのだが、いつの間にか変な話になっている。


 「人間の成長は、いつだって『継承』と『進化』です。新しいことを生み出すのには、まず先人達の力を把握し習得する、そこから付け加えて拡大させていく。俺は師匠の真似は出来ても、そこから発展した動きを完成することが出来る人間ではなかったんです。俺に足らなかったのは、個性だったんです」


 それがなんだと言うのだ。


 「俺は師匠が死んだ後、自殺の原因をありとあらゆる方法で調べました。調べていくうちに色々なことが発覚しました。師匠は所属機関から既に嫌われていたんです、恐らく悪霊が心に住む前から。その厳しい性格と、昔なじみの時代が噛み合わない理論。そういうことから、師匠は完全に立場として孤立していました」


 孤立と言えば、私も似たような境遇かもしれない。本部からの命令で、本名を隠し仲間に対してまで本名も明かさず正体不明のままでいる。そんな私は孤立していた訳じゃないが、確かに仲間との絆は薄い。自分から避けていた感覚すらある。

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