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混合

最初に憑りついた?


 「すいません、晴香さん。時間切れです、申し訳ない。一番に恐れていた事態が起こってしまいました」


 渡島さんが本当に焦っている顔をしている。まるで苦しそうに。額から大粒の汗を流し、辺りを警戒するような仕草をしている。


 「……どうしたんですか? 渡島さん……。先ほどの最初に憑りつかれたというのは……、それとタイムリミットってこれから何が始まるんですか」


 渡島さんは右手の人差し指で前方に視線を促した。そこには……。

 御上さんを先頭に並ぶ、私達の機関のメンバーが並列になって私達を睨んでいた。まるで悪霊を睨むかのような目で。


 「御上さん、これは一体どういうことですか? どうして私達にそんな姿勢を見せるのですか。今、この施設が悪霊によって破壊され、現在も悪霊は逃走中です。だから……」


 「止めて下さい。晴香さん。無駄なんですよ。彼等の目には悪霊が二匹、たたずんでいるようにしか見えてないですから」


 悪霊が二匹? そういう意味だ? 先ほども娘なら、あの瓦礫の下に消えて行った。まだこの場にいたとしても、一匹だろう。これではまるで……。


 「私と、渡島さんが悪霊みたいじゃないですか」


 「あっ、その解釈で正解です。完全ではありませんが、俺と晴香さんは半悪霊化しています。これを憑依装甲といいます。これが俺の最も恐れていたことです」


 事態が呑み込めない、馬鹿げている。納得できっこない。


 「晴香さんは心の中に悪霊を飼っていました、奴が無理矢理に居座っていたという表現が一番正しいですが。奴は娘を語りつつ、とある奇妙な現象を引き起こしてしました。妖力吸収です。これは本来として、陰陽師が妖怪に対しおこなうことです。ですが……悪霊と人間の間にも、それが適応できてしまうんです。悪霊が陰陽師から、または妖怪から妖力を吸収する。この第三世代型の悪霊の怨念奪いは、俺達のような、今の陰陽師と妖怪の関係をそのままコピーされているんです」


 だから、どうして私や渡島さんが悪霊にならなくてはならないのだ。


 「契約というのは、言ってしまえば奴隷化です。俺達陰陽師は妖怪という、悪霊の味方でもなく人間の味方でもない、ただの中立的な立場であった妖怪を、無理矢理闘いの中に巻き込みました。それも共闘と言えば聞こえがいいかもしれませんが、あろうことが奴隷として。そんな契約とも言えない押し付けを、今度は悪霊からしてやられた訳です。人間が奴隷となり、悪霊が支配するシステムに」


 ……行弓君に言い放った自分の言葉を思い出す。さも奴隷制度が、差別主義が、正しい事かのように語った自分の姿が、はっきりと頭の中にイメージ出来た。


 「だから……俺達は契約している関係から、妖力が少しずつ混合していっていった訳です。結び着くように」

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