再会
「狐はなぜ人間を騙すのか。そんな疑問が私の頭の中にはある。人から逃げる為なのか、人を狩る為なのか」
そして今回はそのどちらにも当てはまらない。奴は人を捜索する為に化けている。
「狐という生き物は古来より悪いイメージの塊ではない。かの有名な稲荷神社では神の使いとまでされている。つまりだ、もし今回の事件が単なる妖怪による悪戯ではなく、もし後ろに何者かが糸を引っ張っているとしたら」
知らず知らずのうちに、俺は神の逆鱗に触れた可能性がある。そう、言いたいのか。
「行弓君、何かここ最近で行儀の悪いことをしなかったか?」
遠回しに誤魔化しているが部長の言いたいことは、伝わった。
なぜ、俺は妖怪から探されているのか?
その答えは俺にだって分からない。しかし、明確なことが一つある。俺が陰陽師だってことに関係している。そして部長の言うとおり相手は狐ではなく、陰陽師かもしれないということだ。
部長の先ほどの質問にまさか俺は陰陽師だからです、なんて口が裂けても言えない訳で、適当な言い訳を言おうとしたその時、後ろの二人が地面に倒れた。慌てて駆け寄るが、怪我などはない。ただ二人とも寝ている。
「おい、出てこいよ。一般人に迷惑をかけるのはご法度のはずだぜ」
俺の前方向に黒い雷雲のような霧が現れる。そこに一つの影が。
「ひどいよ、お兄さん。人聞きが悪いなあ。手を出したのは、今の鬼神スキル『舞酒』だけだよ。効果はその辺一体の人払いに睡眠作用ってこんな基本的な解説はいらないか」
霧が晴れ、その女が姿を現した。背中に木の葉の家紋が入った、狐耳着きのフードを被り、うっすら見える髪の色は金色。肩には手の平サイズの可愛らしい子狐がちょこんとお座りしている。
一見若く見えるが、式神からの妖力供給で一時的に若返っているだけで、本当の姿は婆なのだが。
「いやぁ、ようやく見つけた。そこのお姉ちゃんには感謝だな、まさか持ってきてくれるとは」
おかしい、こいつは別の流派の陰陽師のはずだ、この町に来る理由なんてないはずだし、俺に要件なんて思いつかないが。そもそもこいつと俺の接点は、俺が特に何もしない陰陽師になったときに、俺の以前の式神を渡した。それだけなのに。
「なんでお前がここにいる、振払追継!!」